芸能

団菊祭



今月の歌舞伎座は団菊祭。7世尾上梅幸、17世市村羽左衛門 の追善興行と銘打ち、坂東彦三郎改め葉善。亀三郎改め彦三郎。亀寿改め亀蔵。亀三郎の息子が新亀三郎を襲名する親子三代のめでたい襲名披露もおこなわれました。先日テレビで放映された歌舞伎座で行なわれた俳優祭。若手役者達を仕切っていたのが亀寿。声がよく、中堅俳優として頼もしい。

最初の演目は 壽曽我対面。まさに歌舞伎の様式美。富士の巻狩りの総奉行に任じられた工藤左衛門祐経 (菊五郎)の屋敷にずらりと並んだ諸大名。そこへ曽我十郎、五郎の兄弟が現れ、弟の五郎が父の仇と工藤を討とうと迫ります。しかし兄の十郎は弟を諌めます。それを見た工藤は紛失した源氏の家宝、友切丸を見つけよと諭します。
そこへ折良く現れた曽我の家臣が友切丸を手に駆けつけます。工藤は兄弟に打たれる覚悟を決めて、2人へ狩り場の通行手形を与え再会を約束します。全てお約束どおりの絵巻物のような華やかな一幕。最後の大見得シーンの代わりにここで襲名口上。なるほど、色々なパターンがあるのですね。


華やかな襲名口上の後は、伊達騒動を背景にした時代物大作、伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ。1度見たかった作品なので嬉しい。
御家横領を企む執権、仁木弾正(海老蔵) らの経略により乳母の政岡(菊之助)は、若君 鶴喜代を守るため息子千松と共に御殿の奥に籠っています。毒を盛られるのを恐れて食事も自分で作って与えています。支度が遅くなったある日、若君は武士の子は食べなくてもひもじゅうないと言います。子役2人がけなげです。
この後、管領山名宗全の妻栄御前が見舞いと称して毒入の菓子を持参して若君に勧めます。かねてから若君の毒見をするよう教えられていた千松は菓子を取り一口食べてもがきます。それを見た仁木の妹八汐が、この不届き者と千松を壊刀で刺します。幼い千松をチクリチクリと責め殺す歌六の表情の恐ろしさ……。
千松が殺されるのを見ても顔いろを変えない政岡を見て 取り替え子をしたと早合点した栄御前は、仲間だと思いこみ、悪事を画策した一味の連判状を渡します。
皆が去った後、千松の遺体を抱きしめ号泣しながら、お前のおかげで一味の悪事を証明する証拠が手に入った。ようやった、ようやったと息子に語りかける政岡。
この政岡は女形の中で最高の大役だと言われている難しい役だそうです。確かにこの心理描写は難役。
その夜、政岡の本当の忠義心を知った八汐が連判状を取り返しに来ますが、政岡に殺されます。しかし妖術を使い鼠に姿を変えた仁木弾正が連判状を盗んで床下へ逃げます。
場が変わって床下で宿直をしていた忠臣荒獅子男ノ介(松緑)が鼠を捕らえようとしますが、取り逃がしてしまいます。鼠姿の役者が、花道のスッポンに落ちると入れ替わりに海老蔵の仁木弾正が煙と共に出没。薄暗闇に怪しい魅力を見せてくれます。この短い場は男ノ介の荒事と仁木の怪しい美しさで歌舞伎のエッセンス満載。
いよいよ大詰め。対決、刃傷の場。鶴喜代の老臣、渡辺外記の訴えにより幕府の門註所(裁判所)で仁木弾正との対決が行われる。弾正に加担している山名宗全が外記を罪に落とそうとするところへ、出張中の細川勝元が戻ってきて仁木弾正の罪を弾劾し、外記側が勝訴となる。
罪に服した弾正は控えの間で前非を悔い改めたと外記に近づき、隠し持っていた短刀で襲う。館は大騒動になり、瀕死の外記は人々に助けられ弾正を殺す。そこへ届いたのが御家存続の吉報。
この仁木弾正が敵役の大役だそうです。堂々とした傲慢不遜な面構え。妖術を使う怪しい色気を持つ悪人。こう書くと海老蔵にぴったりのはまり役のようだけれど、何か物足りなさを感じます。自分の持ち味だけに頼ってはいけないんということかしら?
一度見たかった先代萩、玉三郎と吉右衛門だとどんな芝居になるでしょうか?


最後の幕は松緑と襲名した亀蔵、2人の華やかな舞踊。屋台の山車に飾られていた神功皇后と竹内宿彌の人形に魂が入り語ります。そこから一転、2人の漁師に善玉、悪玉が乗り移り軽快に踊ります。さらに一転、文殊菩薩が住む天竺の霊地にある石橋。獅子の精が現れ勇ましく毛を振り、獅子の座へと直ります。亀蔵は踊りの名手松緑の胸を借りて立派に相手を務めています。最後に石橋がなかったら、コミカルなだけで寂しすぎる幕。派手な毛振りがあってようやく観客の気持ちも収まりました。

お祝いの幕。

この四方が今日の襲名の主役。

四月大歌舞伎



花散らしの雨が降った翌日。暖かい陽射しにウキウキしながら歌舞伎座へ。昼の部を楽しんだ方達の熱気が溢れています。

今日の演目はこの三作。


最初の演目は『傾城反魂香 けいせいはんごんこう』土佐将監閑居の場。大名お抱えの絵師、土佐将監の隠居所付近に虎が出たと村人が大騒ぎ。何を騒いでいるのかと将監の弟子、修理乃助が草むらを探ると一頭の虎が。日本には虎などいるはずがない。幻だと師匠の筆で其の虎を紙の中へ戻してしまう。これを見た将監はいたく喜び、弟子に土佐の名字を与える。
そこへやってきたのが吃音の絵師又平(吉右衛門)彼も土佐の名字を名乗らせて欲しく、女房おとく(菊之助)共々懇願するが絵師としての功績がないため許されない。おずおずとした又平と、亭主思いで彼のぶんまで喋るおとく。仲の良い夫婦の感じがにじみ出ていていいシーン。菊之助は所作の一つ一つが其の役にぴったりで見ていて気持ちがいい。
そこへ悪人にさらわれた皇女救出の依頼が来ます。又平は自分を遣わすように頼みますが聞き入れられず、弟弟子の土佐修理乃助が命じられます。手柄を立てるチャンスを失い絶望した又平は庭の手水鉢の裏に自画像を描き終えたら自害すると決意します。一心不乱に自画像を描き、おとくも私もお伴しますとまさに刃を立てようとした時、ふと手水鉢の面を見ると自画像が写っています。驚いたおとくは又平の手から刀を取り二人で奇跡を喜んでいると、将監がそれを見てまさに魂が通ったと賞賛して土佐の名字を与えてくれます。
慎んで受けた又平は裃の正装でひと舞します。夫婦の絆を描いた近松門左衛門の作品。吉右衛門のいい味。

第二部は『桂川連理柵 かつらがわれんりのしがらみ』帯屋の場。
一幕のこの芝居だけでは私のような素人には何が何だかわからない芝居。
帯屋の養子長右衛門(坂田藤十郎)は女房お絹(扇雀)と仲良く、店も繁盛して穏やかに暮らしている。だが義母お登勢は自分の連れ子儀兵衛(染五郎)に後を継がせたいので何かと言うと長右衛門に辛く当たる。この日は儀兵衛が拾った長様と宛名書きされた隣の信濃屋の娘お半からの恋文をネタに散々いたぶられている。女房のお絹が機転を利かせ、その長様とは信濃屋の丁稚、長吉(壱太郎)のことだと言う。そこで儀兵衛が 長吉を呼んで話を聞く。この長吉、なりばかりでかい鼻垂れで、女から恋文をもらうキャラではない。しかしお絹との阿吽の呼吸でこれは俺宛の恋文だと言い張って皆を煙にまく。
その夜、長右衛門はお絹に真相を明かします。お半が長吉をお供に伊勢参りに出かけた際、旅館で長吉に言い寄られたお半がたまたま逃げて来たのが長右衛門の部屋。長吉からかばったお半とひと夜を共にしてしまった。申し訳ないと。長右衛門は詫びながらもつい、うっかりのろけてしまいます。お絹は呆れながらも許しゆっくりお休みなさいと部屋を出ていきます。ひとりで寝ている長右衛門をお半が(壱太郎 二役)訪ね書き置きを残して去っていきます。お半が残した書き置きを読んだ長右衛門はお半が身ごもってしまい、身投げするのを知り追いかけます。ここで幕。
実は長右衛門は若い頃に芸妓岸野と恋仲になり心中事件を起こしたことがあります。岸野は死に、自分一人助かった。そして今夜は岸野の命日。岸野がお半に姿を変えて迎えに来たのか? 不思議な因縁にとりつかれたのか、追って来た長右衛門は桂川でお半と一緒に身投げをします。
これは享保年間、桂川に十四、五歳の娘と50男の死体が流れ着いた実話が元になっています。心中だか殺人だか真相は判らぬまま音楽、歌舞伎の題材になったそうです。
いつもほとんど動かない坂田藤十郎が花道を歩いて来た時はビックリ。道化役の長吉と美しいお半との二役を替わるのが上方演出だそうです。祖父と叔父と甥の三代出演。そういえば扇千景さんがまだ大臣の頃、舞妓さんと浮き名を流した藤十郎さんでしたっけ。お元気なんですね。

本日最後の演目は華やかな『奴道成寺 やっこどうじょうじ』有名な舞踊の大曲。近江三井寺で行われる鐘供養に白拍子花子(猿之助)が現れて舞を奉納するから拝ませて欲しいと頼みます。踊っているうちに烏帽子が取れ男であることがバレます。実はこの近くに住まう狂言師、左近であると名乗り見事な舞を次々披露。やがて左近は大勢の捕物方、四天どもをあいてに大立ち回り。鐘に登って蛇の本領を発揮します。
玉三郎と菊之助の娘二人道成寺はシネマ歌舞伎でも見られますが、蛇体になってのシーンが鮮烈でした。昨年末に見た玉三郎達の娘五人道成寺はその華やかさと可憐な様子にうっとり。菊之助と海老蔵の夫婦道成寺では二人の絡みに色気を感じました。この奴道成寺では洒脱でユーモラスな場面も。おかめ、ひょっとこ、翁の三つの面を取り替えて踊るシーンは後見との息もピッタリ。この後見がまたいい男でしたね。この道成寺という曲、色々な演出ができるのだなと感心。役者が変わると雰囲気も全く違う。色々なパターンが見たくなります。

二人の桃太郎



二月の歌舞伎座は江戸歌舞伎三百九十年、猿若祭二月大歌舞伎。アメリカ合州国より歴史が古い。先日テレビで放映された影響か、可愛い二人の桃太郎を見たいと連日大入りとか。


『門出二人桃太郎 かどでふたりももたろう』は 勘九郎の二人の息子のデヴューをお祝いする口上付きの作品。

長男が三代目中村勘太郎、次男がニ代目中村長三郎を襲名。5歳と3歳。可愛い桃太郎に観客はもちろん役者達も目を細めています。ひょっとしたら二人のパパがいちばんドキドキしているのかもしれませんね。芝翫のお爺さん、時蔵のお婆さん。遠くから桃が流れてくるように見せるために桃をどんどん大きくして出すところがバレバレで楽しい。勘九郎と七之助がお父さん、お母さん。雉は菊之助、猿は松緑、犬は染五郎。鬼の大将は勘九郎。吉備津神社神主は菊五郎と豪華な脇役。単純で楽しい。

第2部は『絵本太功記 えほんたいこうき』尼崎閑居の場。芝翫演じる武智光秀(明智光秀 )が 小田春永(織田信長)の屈辱的な仕打に耐えかね、本能寺で春永を殺し、四国攻めから戻ってくる真柴久吉(羽柴秀吉)の軍と対峙した。その戦の最中、光秀の母皐月(秀太郎)は三代相思の主人を殺したことに腹を立て尼崎に閑居。そこへ孫の十次郎(鴈治郎)が初陣のために暇乞いにきます。十次郎戦士の覚悟を悟った皐月と母操(光秀の妻 魁春)は許嫁初菊(孝太郎)と結婚させて戦場へ送り出そうと祝言の席を設ける。この関西カップルの醸し出すほのぼの感。初々しいお坊っちゃま、お嬢ちゃまは江戸前若手役者には出せない味。
そこへ現れたのは旅僧に化けた久吉。一方光秀も久吉を追ってこの閑居へ。光秀は事もあろうに久吉と間違え母皐月を障子越しに竹槍で付き殺してしまいます。不運はこれだけでなく、息子十次郎の敗軍の知らせ。母と息子を失った光秀の前に現れたのは久吉とその部下佐藤正清(加藤清正 橋之助)が現れて、戦場での再会を約束して去っていく。
いずれ光秀も戦場で命を失うことになり、残された二人の未亡人の悲しみが察せられる。


色男丹次郎(染五郎)をめぐる粋な三人の女達。吉原の遊女屋唐琴屋の一人息子丹次郎は許嫁お蝶がいながら吉原芸者米八(勘九郎)といい仲になり勘当される。二人は深川に居を構え、米八は深川芸者に。
ある日米八のライバル仇吉が洲崎 の鼻を行き交う舟中から丹次郎を見初める。このシーンがとても素晴らしい。川べりを進む丹次郎の舟が下手にかかると幕が落ちて舞台一面に青い波が広がる。この瞬間『おお〜〜っ』と客席から歓声が。下手奥からこちらに向かってくる舟の中から芸者政次が丹次郎によびかける。挨拶を交わして丹次郎の舟は運河に見せた花道を登っていく。舞台中央に差し掛かった舟の中から姿を現したのは美貌で鳴らす芸者仇吉(菊之助) 。丹次郎の舟を見送りながら「まの字、あの若旦那は?」というと「よの字のれこだよ」と答えが。「そんならあれが」と言ってちょっと間を置いて「いい男だね〜。」という。それだけのセリフなのに何ていい情景。キラキラ光る水面、粋のいい女達、いいシーンだね〜。
一目惚れした仇吉は積極的に丹次郎に秋波を送り、羽織を贈る。羽織の糸を抜く仕草や、少し酔って柱にもたれてふーっつと息を 吐くところなぞ、あまりの色っぽさに客席からは固唾を飲みほーっとため息がもれてくる。
この羽織が原因で米八と仇吉は大喧嘩。辰巳芸者の威勢のいい言葉と蛇の目傘を使った二人の大立ち回り。二人の人気役者の江戸っ子らしい見せ場になって目を楽しませてくれる。勘九郎も普段立役なのに、愛嬌のある粋な芸者役を好演。
一方、丹次郎の恩ある侍が大事な茶入れを盗まれて切腹されそうになるが3カ月の猶予をもらい丹次郎の家に身を寄せている。偶然仇吉が盗んだ犯人達の話を盗み聞き。丹次郎のために一肌脱ごうとその犯人に接触。なんやかんやの末茶入れは無事戻り、丹次郎はお蝶と結婚。二人を妾にする結末に「おいおい、それはないよ丹次郎君」と突っ込みたくなるが、これは全編粋なセリフが飛び交う、楽しい話。

これは今回のお披露目にスポンサーから贈られた祝い幕。


節分に舞台から撒かれた豆。

初春大歌舞伎




今年初めての歌舞伎座。それも千穐楽。大入り御礼が誇らしそう。



夜の部はお芝居、舞踊、お芝居。


夜の部の最初の演目は『伊井大老』開国か攘夷かで国中が揺れている時に安政の大獄で若者達を捉え、開国を推し進めようとしている伊井直弼は暗殺の危機にさらされています。そんな中、千駄ヶ谷の別宅に住む愛妾お静の方との間に設けた鶴姫が危篤に。正妻お昌の方はおっとりした性格であまりやきもちも焼かず、殿様にお見舞いに行っていただかなければと心配してお付きのお女中達を焦ったがらせています。雀右衛門の雰囲気にぴったりなお嬢様育ちの人のいいお昌の方。片や玉三郎演ずるお静の方は可愛いやきもちを焼く情の深い女。不幸にも幼い姫は亡くなり、数ヶ月後の月命日。明日は雛祭りという日に直弼の旧知の仲である仙英禅師が訪れて鶴姫の仏壇に線香をあげています。お静の方は仏門に入りたいのに、自分がいなくなった後に直弼がお昌の方と睦まじく暮らしていくであろうと想像すると気持ちが鈍ると相談する、禅師はなんと正直な可愛らしい方だとお静の方を評した後、ふと直弼が書いた書を見て暗剣の相があるのを見抜く。お静の方にあなたの悩みはちがうものになるだろうという。折しもやって来た直弼に会わず、一期一会と書いた編み笠をおいて立ち去る。
編み笠に書かれた一期一会を見て幸四郎演じる直弼は、自分の身に起こるであろう運命を予感する。
夕暮れになり急に冷たい風が吹いてくる。お互いにこれから起こるなにか不吉な予感を振り払うように雛祭りを祝い、酒を酌み交わし二人が出会った15年前の埋木舎時代の話に興ずる。この場面の玉三郎の愛らしく艶やかなこと。直弼が十四男坊で故郷埋木舎に住んでいる頃は手元も不如意で二人で質素に暮らしていたというセリフにびっくり、そして納得。お静の方とはその頃からの情のこもった二人の時間が流れているのが伝わってくる素敵な場面です。
友人は去年雀右衛門が演じたお静の方と幸四郎でこの場面を見たそうですが、何と言っても玉三郎に軍配と言っていました。そうでしょうね。このお静の方は本当に女の中の少女がそのまま残っていて、若い頃の部屋住みの直弼と足軽の娘お静が語り合っているように見えました。
折しも庭の桃の木に何やら白いものが。奥で雛祭りを祝っていたお女中達の賑やかな声が聞こえてきます。明日は雪が積もるかもしれない。雛祭りに雪が降ったらお雛様が驚きますねと。
伊井大老暗殺前夜のひととき。



今年は中村富十郎の七回忌。長男鷹之資が故人の得意な演目『越後獅子』を踊って偲びます。日本橋に越後からやって来た角兵衛獅子は踊りや軽業を見せて門銭を稼いでいます。浜歌やおけさを踊り、長い布を自在に扱う 布さらしを見せて観客を喜ばせます。富十郎といえば高齢で結婚してお子さんを設けたという話題でワイドショーを賑わせた記憶があります。お父さんが亡くなった時に 小さな男の子だった遺児が立派に舞台を務めている姿に思うところある方達も多いのでは。泉下の富十郎が目を細めているのでは。
富十郎といえばアズマ歌舞伎で有名な吾妻徳穂の三男。二代目吾妻徳穂は彼女 の孫で四代目鴈治郎の妻。彼らの息子が今回も歌舞伎座に出演している壱太郎。🤔うーん、ということは年は下だけれど鷹之資は壱太郎のおじさんか? 歌舞伎の姻戚関係は複雑怪奇。



暗転から一転、華やかな吉原の街並み。吉原一の美貌を誇る松の位の傾城が花魁道中。この『傾城』という曲では愛しい間夫への心情や吉原 の四季折々 の出来事を玉三郎が艶やかに踊ります。



最後の演目は外から見た 忠臣蔵『松浦 の太鼓』。討ち入り前日俳諧師宝井其角(左団次)は日本橋で赤穂浪士の大高源吾(愛之助)に出会います。源吾は落ちぶれた風情で煤払いの箒行商をしています。もともと風流を好み其角の弟子でした。長いこと行商をやっていると堅苦しい侍の社会に戻る気がしないと言う源吾に其角は「年の瀬や水の流れと人の身は」という句に下の句をと頼みます。すると源吾は「明日待たるるその宝船」という句を詠んで立ち去ります。
場面変わって松浦鎮信(染五郎) 屋敷では其角の指導で句会の最中。松浦は大石内蔵助とは軍学者、山鹿素行の塾の同門。赤穂浪士達を密かに応援していたのに、いつまでも行動をー起こさない大石に内心腹を立てていた。源吾の妹(壱太郎) は其角の口利きで松浦家に奉公しているが、突然暇を出されます。なぜなのか、本人はもとより周りの御家来達も腑に落ちません。其角が尋ねてもはっきり答えくれません。この時の松浦の拗ねたような駄々をこねているようなお茶目な雰囲気はこの役を得意とした吉右衛門風だそうです。染五郎はこういう役が上手い。かたやおとぼけの左団次。面白くない訳がない。それでは妹はしばらく其角が預かりますとお暇する時に、そういえば昨日源吾に会いました。と伝えると、にわかに何か言ってなかったかと問う松浦。落ちぶれた姿が哀れで歌を詠んで下の句を詠んでもらいました。してその歌は?と矢継ぎ早に問いただす松浦。そこで其角が歌を披露。「年の瀬や水の流れと人の身は 明日待たるるその宝船」
その歌を聞いた途端に二人に戻れと言います。そこへ隣の吉良邸から陣太鼓の音が。満面の笑みを浮かべた松浦。今宵赤穂浪士達が吉良邸へ討ち入りしたのをこの下の句で悟り、追い打ちをかけるように聞こえてきたこの陣太鼓、これこそ同門だからこそわかる大石の打ち鳴らす山鹿の勝利の陣太鼓。
そこへ駆けつけてきた討ち入り装束姿の源吾。まず第一 に松浦様へご報告に上がりましたと、仇討ち成功の顛末を語ります。あっぱれ四十七士。後のことは心配するなと言うシーンで大団円。初めて見たけれど楽しい芝居。友人は吉右衛門で見たそうです。歌舞伎の面白さは役者が変わると同じ芝居でも所作が変わったり出方が違うなどあるし、上方歌舞伎も 違うそうだし、見比べる楽しさがあるのですね〜。


この歌舞伎絵を見るのも楽しみ。芝居の内容、役者をよく捉えています。


ロビーに飾られていた中村富十郎さんのお写真。千穐楽なので役者さんの奥様方もたくさんお見えになっていて華やかです。もちろん愛之助さんの奥様も。

玉三郎 舞踊三昧



今年最後の歌舞伎は、贅沢にも玉三郎づくし。12月公演は朝、昼、夜の三分公演。夜公演が、なんと二本とも玉三郎主演の舞踊劇。この公演を見た翌日インドへ行くので本当にいいタイミング。

最初の演目は『二人椀久 ににんわんきゅう』玉三郎と仁左衛門のコンビが有名だけれど、今日の玉三郎のお相手は勘九郎。豪商椀屋久兵衛(勘九郎) は遊女松山(玉三郎) に入れあげて身代を傾けたので座敷牢につながれてしまいます。松山恋しさのあまり気が狂い、牢を抜け出してさまよい歩いています。さまよいまどろむうちに恋しい松山に再会します。二人で連れ舞いをし、逢瀬を楽しんだのもつかの間。松山の姿はなく、全て幻だったと気がつくのでした。普段立役で男っぽい役のイメージの勘九郎が玉三郎相手に恋に狂う男を切なげに演じていて新しい一面を見せてくれました。玉三郎の美しさはため息が出る。上村松園の円窓美人さながら。


後半は贅沢にも五人の白拍子花子が登場する『五人道成寺』 玉三郎、勘九郎、七之助、梅枝 、児太郎が華麗に舞います。桜の花吹雪の中、鐘供養が行われる道成寺に花子と名乗る白拍子が鐘を拝みたいと訪れます。供養の舞を舞うのならと許され、舞い始めますが鐘を眺める目が怪しく輝き、形相が変わります。ついに鐘に飛び込み蛇体となって鐘に巻きつきます。花子は叶わぬ恋の恨みから熊野詣での僧安珍を焼き殺した清姫の亡霊だったのです。玉三郎が若手の役者たちに混じっても可憐さで遜色ないどころか、四人を引っ張りあげています。眼福てこういうものを見たときにいうのかしらね。


この美しいイメージを持ってインドへ行こう。

シンデレラ



時々歌舞伎をご一緒する友人が熊川哲也のKカンパニーのシンデレラのチケットが手に入ったからとご招待されました。これは何を差し置いても観に行かねば。ご本人の生の舞台を一度は観たいけれど、今回は彼の演出で彼のこだわり、美意識を堪能しましょうか。今日拝見するのは中村祥子さんのシンデレラ。

芝居でも舞踊でも、会場や演目で観客層が違うのが面白い。おしゃれな女性が圧倒的に多くて華やかな雰囲気。歌舞伎座の方が親しみやすいのは、中でお弁当を食べるから?卵焼きの匂いとかしていて居心地がいい。オペラ座に行ったら豪華で素敵でしょうね…。

友人がメールでやたらバルコニーと書いていた理由がわかりました。ステージに近い桟敷席なのでオーケストラもよく見えます。舞台を観るときに身体を斜めにしないと観にくいのが難点ですが、オーチャードホールでは天井に近い三階席が常連なので興奮しています。古典バレエをあまり観たことがないけれど大道具が洗練されていて上質な雰囲気。ダンサーの足首の柔らかさにうっとり。自分の身体があんなに動けたら気持ちいいでしょうね。義母の役のダンサーはちょっとやりすぎで浮いているなと思ったら、彼は外国人のダンサー。これは外国スタンダード⁇ 歌舞伎は幕が下りたら誰もアンコールで出てこないけれど、バレエはお約束のアンコールを楽しみました。

星回帰線



先日友人に誘われて池袋のシアターウエストに。ここでは現在向井理主演の『星回帰線』が上演されています。
友人の趣味は向井理。映画でも舞台でもテレビドラマでも、コマーシャルでもなんでもOK!
私も何本かご相伴しました。
池袋は近いのに縁が少なくあまり訪れたことがありません。10年以上前に自由学園をお借りしてコンサートを企画して以来かも…。
芸術劇場も初めてなのでそれが楽しみ。


星回帰線。岸田戯曲賞を受賞した演出家、蓬莱氏の作品。


友人はすでに興奮気味。


いい感じの舞台。後部座席でも見やすい。
上演前のワクワクはいつも楽しみ。
七人の出演者。それぞれが自分の周りにいそうなキャラクターを代表していて狭い世界の中での人間関係の萌芽、熟成、勘違い、争い、嫉妬、愛憎、が絡まります。このねじれた関係をどう修復するのかと気を揉んでいたら、そこは見事にランディング。人にはそれぞれの分があるよと主人公に言わしめます。

十月歌舞伎



10月、11月と2カ月連続で橋之助一家総出の襲名公演。9月はチケットが取れず、不貞腐れていたので今日は雨でもご機嫌な歌舞伎座。開演を待つ人々の興奮は雨でも一緒。


襲名披露公演はおめでたい気分にあふれているので、特別ファンでなくともソワソワしますね。橋之助改め中村芝翫。長男国生改め橋之助。次男宗生改め福之助。三男宣生改め歌之介。三人一緒なので区別がつかない。三男 坊が一番美形に見えるが まだ15歳だからこれから難しい時期を越さないと。でも、2カ月続いての襲名公演は大変でしょう。橋之助ってこれという代表作を思い浮かべられないけれど? 息子達しかり。


最初の演目は初々しい息子達による創作舞踊。『初帆上成駒宝船 ほあげていおうたからぶね』 成駒屋縁の歌詞でお祝いムード満載。

今日のおめあて七之助の『女暫 おんなしばらく』歌舞伎十八番の暫を女方が演じます。源平の戦いで功を立てた蒲冠者範頼が家臣を引き連れ北野天満宮に詣でて、位定め(任官)の儀式を行われるところに木曽義仲の遺児清水冠者義高と許嫁の紅梅姫が登場。紅梅姫に横恋慕している範頼だが姫が言うことを聞かないので成田五郎に命じて一同を殺そうとします。あわやというところへ、向こう揚幕から『しばらく』の声がかかり花道へ巴御前(七之助 美しい)が登場。範頼の非道、暴虐、越権を責め、紛失していた名刀 倶利伽羅丸を見事取り出します。範頼の仕丁を成敗、悪人達をやり込めて義高一同を助けます。
もともと立役で当った作品を女役でやるという趣向は女鳴神などであるそうです。この暫は大力無双の立役を女でやるので巴御前のようなスーパーウーマンが、強くて、しかも女の色気も見せるのが大事と言われています。今回の七之助の巴御前は正に強くて可愛い魅力に溢れています。
登場した時の花道でのつらね。本舞台に来てからの元禄見得、強い女は美しい。 今回はここから花道の幕外の引き込みが楽しかった。荒事を行った後、ふと女に戻って恥じらう風情がなんとも言えない色気があって美しい。しかも今日は花道の横の席で手を伸ばせば袂に触れそうな場所で七之助を堪能。衣装の細かな装飾、意匠もよく見えて質の高さがよくわかります。歌舞伎の魅力はこの衣装の力も大きい。
この引き込みの花道で松緑が舞台番として登場して六法を伝授。二人の掛け合いが面白い。ここで七之助が祖父芝翫の思い出を語り、襲名の口上を述べるのが感動的。そうか、橋之助一家とは親戚だったんだね。
でも、勘九郎が出ていないのはなぜ? 松也演じる轟坊震斎と、児太郎演じる女鯰若菜のコンビが面白い。


美味しいお弁当を食べてノンビリムードになった三幕はお染久松と女猿廻しが絡む清元の舞踊劇。『お染久松 ウキネノトモドリ』向島の三囲神社の鳥居前。油屋の一人娘お染(児太郎)は親の決めた祝言が嫌で家を抜け出してきまぢた。そこへ追ってきたのは恋仲の丁稚久松(松也)。お染が二人の恋の顛末を語るくどき。二人は死ぬ覚悟をしています。そこへ通りかかった女猿廻し(菊之助)がこの舞台の主役。二人の姿を見た猿廻しは、今世間に浮名を流しているお染久松と悟り町の読売を引用して二人に男女の道を教え、死ぬことを思いとどまらせようとします。菊之助が洒脱な芸で女大道芸人を演じています。第二幕でユーモラスなコンビの二人が一転、心中を決意する恋人役。児太郎は初々しいという風ではないなとおもったけれど、このお染という女性はこの時点ですでに久松との間に子供がいたというからビックリ。親も許してあげていればいいのにね。

昼の部最後の演目は橋之助一家が出演する『幡随長兵衛 ばんずいちょうべい 』大勢の観客で賑わう江戸、村山座の舞台では七之助演じる源頼義、亀三郎演じる坂田金時らが大熱演している中、旗本水野十郎左衛門の家臣が乱入して騒ぎ出します。そこへ客席から橋之助演じる長兵衛が登場。家臣を懲らしめ、私たち観客も舞台に巻き込んでくれます。なんとかその場は収まったが、一部始終を見ていた旗本水野十郎左衛門は何か心におもうことが…。
場面変わって長兵衛の家には三人の息子達を含めた子分達が鎮座しています。出先から戻った長兵衛のお内儀(雀右衛門) と幼い息子(この子がセリフも多いしなかなかの役者 ひょっとして勘九郎の息子❓)
そこへ水野の使いが登場。主人が一献傾けたいのでと招かれます。村山座以降、あちこちで争いの絶えない旗本と町奴。この誘いが水野の悪企みと知りながら出向く長兵衛の男気。誂えたばかりの着物を着て水野も館へ。子分達との別れのシーンで親子四人がちょっと絡みます。
後はご存知、水野の館で酒宴になり、酒をこぼされ風呂に誘われと、どんどん悲劇の場面に。最後にまた息子達も出てくるかなと思ったがもう出てきませんでした。
幡随 長兵衛のこの場は以前海老蔵で見たけれど、色気ではやはり海老蔵に軍配。


今回の襲名披露公演の祝い引き幕。

八月納涼歌舞伎



日本中がヒートアップしている毎日。夏バテ気味の友人を誘って八月納涼歌舞伎を見てきました。その昔、大物俳優達が避暑に出かけたあと、留守を守る若手俳優達が始めた納涼歌舞伎。朝、昼、夜の三部公演を行って一時の涼を求める観客を楽しませたのが言われだそうです。
涼しい劇場で浮世離れしたお芝居を見れば、身も心も癒されます。

私達が見たのは朝の部。最初の演目は『こもち山姥』関白兼冬の館では息女、沢瀉姫が許嫁の源頼光が行方知れずになったために心が晴れません。侍女たちが慰めるために煙草屋源七(中村橋之助)を連れてきて歌わせる。その時偶然外を通りかかったのが大阪の傾城、荻野八重桐(中村扇雀)。今は粗末な黒と紫の文反古の着物を着て恋文の代筆をして歩いている女です。館の中から聞こえてきた歌は、自分と昔の恋人坂田蔵人行綱が作ったもの。誰が歌っているのか確かめたいと思い、侍女の手引きで館に入ります。果たして源七は蔵人でした。
ここから扇雀の一人舞台。自分を捨てた男への恨みつらみ。その男をめぐって遊女仲間と争ったいきさつ、男との愛憎などを姫に語って聞かせます。この恋模様を語って聞かせるのを『しゃべり』というそうです。
浄瑠璃に合わせたこのしゃべりが面白い。捨てられた男への面あて、恋敵の女の様子がこれでもかというくらい踊られ、たまらず蔵人はその場を逃げる。扇雀がこんなに踊る芝居を見たことがなかったので感動。
姫が部屋を去った後、戻ってきた蔵人を責める。実は蔵人は父の仇を討つために八重桐を捨てて仇討ちの旅をしているという。しかし、その仇討ちは蔵人の妹がすでに果たしていたのです。それを八重桐が蔵人に告げると妹に仇討ちをされた面目なさに、その場で自害します。その時に蔵人の身体から離れた魂が八重桐の胎内に入って坂田金時を宿す。八重桐自身は怪力無双の子供を孕んだ山姥になるのです。ここでこの演目の名前に納得。
そこへやってきたのは澤瀉姫に懸想している清原高藤の家来太田十郎(己之助) 。姫を手に入れようと力づくで押し入ってきた。山姥になった八重桐は顔の隈取りも荒々しく大立ち回りをやってのけます。扇雀がいい気持ちで大熱演。己之助も荒くれ者を楽しそうに演じていて面白い演目でした。この荒唐無稽を説明しようと思うと一苦労。何故?⁉️ ⁇ そのナンセンスを実際に見てストンと納得すればもう虜。
ここで30分休憩。お弁当を食べてお茶して忙しい。
二つ目の演目は『権三と助十』江戸の裏長屋に住む駕籠かきの権三(中村獅童)と相方の助十(染五郎)。権三は女房おかん(七之助)と、助十は弟助八(己之助)と暮らしています。皆仲が良いのに、何かと言うとすぐけんかになる賑やかな人達。年に一度の井戸替えの日。のらりくらりとサボっている権三。それを咎める助十、助八。応戦するおかんと井戸替えの綱絵を引いてゾロゾロ連なって来る長屋連中。賑やかで楽しい光景。
そこへ大家の六郎兵衛(彌十郎) を訪ねて来た若者が。この若者は去年の冬、和泉屋の隠居を殺した罪で投獄され先日牢死した小間物屋彦兵衛の息子彦三郎です。父に限ってそんな恐ろしいことをする筈が無いと事実を確かめるために母と妹を大阪に残してやって来たのです。彦兵衛の人柄を知る大家始め長屋の連中も彦兵衛がそんなことをしたとは考えられない。
実は権三と助十は関わり合いを恐れて黙っていたが、その殺人があった夜、近くの天水桶で着物の裾と何かキラっと光るものを洗っている左官の勘太郎を見たのです。今更申し上げて申し上げてかえって咎められると渋る二人。大家の六郎兵衛が一計を案じ, 彦三郎、権三、そして助十を縛り奉行所へ。三人が喧嘩をしたのでお縄にしたと奉行所へ訴えて名奉行の大岡越前に再吟味を求めることに。
数日後、長屋預かりになり家でゴロゴロしている権三と助十を訪ねて来たのは、なんと左官の勘太郎(亀蔵)。賭博好きの暴れ者という評判の勘太郎が奉行所から疑いが晴れて放免になりお礼にやって来たのです。晴れて放免になったので二人にお礼を言いたいという勘太郎。そのネチネチとした口調に怒った助ハが、啖呵を切って勘太郎を責めると本領発揮した勘太郎。凄んだところを皆で縛り上げる。そこへやって来たのはなんと奉行所の役人。名奉行大岡越前は口を割らない勘太郎を泳がして様子を伺っていたのです。自由になってすぐに家へ戻った勘太郎は天井裏に隠していた証拠の品を焼くところを目撃されていたのです。
一件落着した長屋連中をさらに驚かせたのは、なんと死んだと思われていた彦兵衛が実はお奉行の計らいで生きていたのです。というわけで大大円。楽しい長屋の様子、江戸の暮らし振り、市井の人々の様子がイキイキと描かれて笑いっぱなし。七之助演じる女房が絶妙。高貴な姫、蓮っ葉な女郎、冷たい美剣士何をやっても上手くて、本当に天性の役者振。


今日のお弁当は手直なところ、木挽町ホールで購入。

千秋楽公演



夜中に掛かってきた電話に寝ぼけ眼で出ると、友人が千秋楽のチケットが取れたけど行ける? と。千秋楽って今日ではないか。寝ぼけた頭でスケジュールを考えて、なんとかなりそうだと判断して電話を切ってまた爆睡。翌日生徒さんに少し早めに来てもらい、お陰様で開演に間にあったツイテイル私。


第一部は『荒川の佐吉』ヤクザに憧れる大工の佐吉(猿之助)は鍾馗の仁兵衛親分の下っ端三下。正義感は強いけれど腕は立たない。親分が浪人、成川郷右衛門(海老蔵)に斬られて怪我をした上に縄張りをうばわれてしまう。他の子分が皆いなくなった後も佐吉だけは親分に仕えている。ある日親分は大店丸総に嫁いだ娘の生んだ赤ん坊を連れてくる。この子卯乃吉は生まれつき目が見えないために両親に捨てられたのだ。親分はこの子を佐吉に預けて、一攫千金を狙い、いかさま賭博に出かけて殺されてしまう。
佐吉は友達の大工辰五郎(己之助)と一緒に卯乃吉を育てている。そんなある日、丸総に頼まれ卯乃吉を取り返しに来たヤクザを殺してしまう。初めて人を殺めた佐吉は、今なら親分の仇が討てそうだと言って飛び出していく。会合の帰りの成川達を待ち伏せし戦っているところに、偶然通りかかった相模屋政五郎が仇討ちを見届けると宣言。ついに佐吉は成川を殺し親分の仇を討つ。
念願の仇討ちを果たし卯乃吉、辰五郎と平和に暮らしている佐吉を訪れたのは、仇討ちの証人になってくれた相模屋と卯乃吉の母親。相模屋は佐吉に鍾馗の親分の跡目をついでくれ。そしてその代わりと言ってはなんだが卯乃吉を両親に返してあげてと頼みに来たのだ。丸総の主人、卯乃吉の父親が病気になったのでどうしても卯乃吉を引き取りたい状況になったのです。男手で血の繋がりのない盲目の子を育ててきた苦労、今では実の親子以上の深い絆で結ばれた佐吉と卯乃吉。しかし佐吉は卯乃吉の将来を考えて丸総に返すことに。
そして、自分は跡目は継がず、身を引いて房総へ旅立つと言う。明朝旅立つ佐吉を向島の桜とともに見送る相模屋。そして親分の末娘で昔佐吉を袖にしたお八重。そこへ辰五郎におぶわれて卯乃吉も見送りに。花吹雪の中の別れのシーンは子供の頃に見た任侠映画を思いだし、思わずもらい泣きしそう。
役者が皆役にはまっていて面白い芝居。猿之助は可愛げたっぷり。ニヒルな浪人の海老蔵はなんていい男。己之助もとても上手くなってふとした表情が三津五郎さんを彷彿。


先日一幕見で天井桟敷から見た『鎌髭』を今日は下の席で座ってじっくり見ます。見逃していた場面もあって二度見を堪能。しっかりした脚本が残っている訳ではないので、どう再開するかは脚本、演出、役者に掛かっています。どうしてこうなるの?という疑問は挟まずに、たっぷりと様式美を楽しむ芝居。
海老蔵の景清がお縄になって、右近演じる猪熊入道と花道を去る場面では、無事千秋楽を迎えた感謝と感激を表して、観客も大喜び。海老蔵の興奮が伝わってきました。先代團十郎がいつか舞台で演じたいと言っていた鎌髭、海老蔵にとって思い入れのある芝居なのでしょう。
10分の休憩の後で今月最後の芝居はやはり歌舞伎十八番のうちの景清。先の芝居でお縄になった景清は取り調べに一言も口をきかないので岩永左衛門は愛人の阿古屋と娘の人丸を呼び景清に話させようとします。
そこへお供を大勢引き連れて阿古屋と人丸がやってきます。なんと牢屋の前で廓遊びの再現をします。客の振りをする岩永が本音で阿古屋を口説くと、景清と岩永を比べたら 捻子の緩んだ三味線と、いい音色の三味線。そのくらいの差があると岩永を罵倒。殺せるものならやってみなと廓の意地を示す阿古屋。
怒った岩永が刀を振ろうとしたその矢先、秩父庄司重忠(猿之助) が登場。人払いをさせて景清と対面。景清は天下泰平の世界を作るのが 望みと訴えます。その言葉に重忠は源頼朝も同じ思いだと伝えます。それを聞いた景清は復讐の念を捨てます。ここから華やかな景清の牢破り。びっくり仰天の大伊勢海老の作り物が出てきて、その前で派手な立ち回り。ここぞとばかりに暴れ回る、まさに歌舞伎な世界。お約束のラストの見得でクライマックス。ちょっとやりすぎ、ふざけすぎなところも目に付きました。
ショーと化してしまったと嘆く御人もいらっしゃると思いますが、海老蔵が頑張っている姿に免じて大目に見てください。この景清も先代が学生の頃に荒磯会で演じた事があり、いつか再演したいと望んでいたそうです。

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