芸能

六月大歌舞伎



六月の歌舞伎座。梅雨の合間のお楽しみ。

昼の部は菊五郎、夜の部は吉右衛門が活躍。私が楽しんだのは夜の部。

最初の演目は夏祭浪花鑑 なつまつりなにわかがみ。吉右衛門が演じる団七九郎兵衛は喧嘩で相手に怪我を負わせて死罪になるところを浜田家家臣、玉島兵太夫の執り成しで死罪を免れ放免されます。序幕は放免された団七を迎えに来た女房お梶(菊之助) 息子市松(菊之助の息子和史) 釣船三婦(歌六)が住吉神社の⛩の前で今か今かと待っています。女房と息子は住吉神社へお礼参りに。三婦の前に籠が止まり若侍が降りる。籠代を巡って駕籠かき人足と若侍が揉めているのを三婦が治める。するとこの若侍は伝七の恩人、玉島兵太郎の息子磯之氶(種之助)だとわかる。そこで三婦が磯之氶を待ち合わせの料理屋へ先に行って待つように勧める。ようやく御赦免になった伝七が現れるが、髭ボウボウのなんともむさ苦しい成り立ち。そこで床屋で身仕舞を直して男前で現れる。次に現れたのは磯之氶の恋人、花魁の琴浦(米太郎)。しつこい客に付きまとわれていたのを伝七に助けられて、磯之氶の待つ料理屋へ。またまた現れたのが一寸徳兵衛。喧嘩を仕掛けてくるがそこへ止めに入ったのが女房お梶。なんと両人ともに主筋が同じだと判り義兄弟の契りを結びます。舞台の上には吉右衛門、菊之助、和史と三代並んでいい雰囲気。賑やかで楽しい序幕。
第二幕は釣船三婦の家。誤って人を殺めた磯之氶を故郷に帰す算段をしていた三婦と女房おつぎ(東蔵)。ちょうど挨拶に来た徳兵衞の女房お辰(雀右衛門)。おつぎがお辰に磯之氶の後見を頼み、受けてもらう。しかし、三婦がお辰は若くて色気があるので何かあるとまずいとおつぎの申し出を却下。それを聞いたお辰は部屋の隅に置いてあった今で言うアイロン用の焼きごてを自分の頬に当てて顔を醜くする。どうぞこの顔なら御心配無用と。驚いた2人に家の亭主が惚れているのはここ(顔)ではなく、ここ(心)でござんす。と粋なことば。流石、任侠の女房。前からずっと気になって観たかったこのシーン。雀右衛門のセリフ回しが上手くなっていい雰囲気。
気にいらないのは上方侍の磯之氶のなんとも言えない頼りなさ。恩人の息子とはいえこんな男のために皆が奔走しなければならないの?種之助は凛々しい役も上手だということで、この役がこんな男なのです。きっとこの坊ちゃんぽいところが浪花の男衆には堪らんのでしょう。
さて磯之氶はお辰が面倒を見ることになりましたが、恋人の琴浦は伝七の舅、義平次(嵐橘三郎)が金に目がくらんで騙して連れ去ります。それを知った伝七が義平次を追いかけて悲劇の場面に。賑やかな祭囃子が聞こえる長町裏。川辺まで義平次を追いかけて来た団七に、義平次は悪態をつき、穏やかに事を治めようとしている団七をけしかけます。弾みで刀が抜かれてあとは悲劇へと一直線。髪振り乱し、着物ははだけ、川に落ちて泥まみれ。勘三郎と笹野高史が演じた同じシーンの写真が雑誌に掲載されていたので拝借しました。この殺戮場面の裏では祭りのピーク。塀の向こうに神輿の頭が見え、お囃子と掛け声が聞こえてきます。が、一瞬なんの音も聞こえず、まるで白日夢かのように義平次を殺める団七。死体を川に落し、血塗られた刀と足を洗い身仕舞を直して花道へ這うようにやって来た伝七。[ どんな悪人だろうが、舅は舅。] 絞り出すように発した言葉の重み。
親殺しの大罪を犯してしまった団七、たとえ逃げおおせたところで、重い罪が消えることはなく、絶望の淵に立っている男の悲哀が迫ってくる吉右衛門の演技でした。

今は亡き勘三郎。義平次は笹野高史。迫力あるシーン。



次の演目は 巷談宵宮雨 こうだんよみやのあめ 。前の演目が舅殺し、なんとこちらは伯父殺し。宇野信夫原作です。
芝翫演じる龍達は妙蓮寺の住職に収まっていたが生来の女好きで寺の前にある花屋の娘との間に女児をもうけます。花屋の娘は産後の肥立ちが悪く亡くなり、産まれた娘、おとら(児太郎)は甥の遊び人虎鰒の太十(松緑)に引き取られる育てられていましたが、太十の借金のカタに年老いた医者の家に妾奉公に出されるてしまいました。
その龍達は女犯の罪で寺を追われて、日本橋で晒し者になりましたが、龍達が金を持っているに違いないと見込んだ太十が引き取ります。女房おいち(雀右衛門)との貧乏長屋に転がりこんだ龍達と太十の間の腹の探り合いがコミカル。
ついに龍達が、身内しか信用できない。頼りになるのはお前だけだと太十に百両の大金を寺の縁の下に埋めてあると打ち明けた。早速夜中に寺へ忍び込み、ほうほうの手で百両を見つけて来た太十。
百両の大金を胸に抱いて安心して寝ている龍達の側でいくらもらえるか皮算用をする夫婦。こんな大変な目にあって手に入れたのだから30両は固いと言う太十。おいちと2人ああしてこうしてと話が弾みますが、目を覚ました龍達が2人に与えたのはたったの一両。
これはないと激昂する太十。険悪な家の中。そんな時いつも何かと世話になっている隣の夫婦が喧嘩をして飛び出した女房を追いかけて亭主も家を留守に。居合わせた太十は仕方なく留守を守っていると、昔の賭博仲間がヨイヨイになって鼠取りの薬売りになって通りかかる。茶菓子のお返しにと置いていった鼠取り。橘太郎演じる薬売りもいい味。
思いがけず手に入れた劇薬がこの後の悲劇を生み出します。太十が龍達に悪口を吐いて悪かったと謝り釣ってきた鯰を食べてくれと差し出す。鯰鍋を美味しそうに平らげる龍達。食べ終えた途端に苦しみだし、蚊帳の中で寝ていたが死んでしまう。
実は薬を盛ったとおいちに打ち明け2人で死体の始末を算段。葛籠の中に死体を入れ台車に乗せて太十が川に捨てに行く。
早く帰ってきてと怖がるおいち。部屋の明かりが消えて悲鳴をあげるおいちの体がスッーと蚊帳の中に引き込まれる。帰って来た太十がおいちを探し蚊帳の中で死んでいるおいちを見つけた時、隣人の声が。妾奉公に出されていたおとらの遺体が吾妻橋から上がったという。そこは先程龍達の死体を投げ捨てた場所。慌てて橋に到着した太十。欄干から何かに引き込まれて行くように川へと落下していきます。
芸達者な役者達の丁々発止のやり取りを楽しんでいる間についに誰もいなくなった。怖いお話でした。

三月大歌舞伎



ポカポカ陽気に誘われて桜も開花。チケットが手に入ったという嬉しい知らせも同時にきて思わずにっこり。先日は仁左衛門と玉三郎の競演にウットリしましたが、昼の部は愛之助、松緑、芝翫、扇雀、雀右衛門、孝太郎などなどが競演します。

最初の演目は[国性爺合戦] こくせんやがっせん 名前は知ってるけれど観るのは初めてなので楽しみにしていました。和藤内(愛之助)は明国の老一官と日本人の妻渚との間に生まれました。父の祖国、明が韃靼(だったん)に攻められているため父と共に再興を図るべく明に渡ります。頼りにしたのは老一官が最初の妻との間に設けた娘錦祥女(扇雀)の夫、獅子ヶ城の城主の甘輝(芝翫)。
城を訪ね夫の留守を守っている錦祥女に老一官は親子の対面を求めます。幼い頃に生き別れた娘に残した父の自画像。鏡越しに楼門から老一官の顔を見て父だと認識して喜び、夫が帰還したら援助を乞う。もし援助してくれるなら川に白粉、ダメなら紅粉を流して知らせると言う。やがて帰還した甘輝は妻の縁故で韃靼を裏切ることをよしとせず、妻を殺そうとします。それを阻止したのは人質として残っていた渚。二人の女の間に挟まれ手の出ない甘輝。何か決心した錦祥女。川に流したのは?
和藤内の見守る中、川面に紅が流れてくる。怒った和藤内が城目指して両手の飛六法で花道から引っ込みます。この和藤内は荒事の代表で六法で引っ込みを見せるのは弁慶、梅王丸、そしてこの和藤内だそうです。
城に戻った和藤内は甘輝に迫ります。そこへ胸から血を流した輝祥女が。妻の縁故にひかれて裏切ることをよしとしない夫の胸中を察して自死を選んだ錦祥女。その姿を見た渚もまた後を追って自死してしまいます。二人の女の犠牲に甘輝の心もとけ、和藤内を延平王国性爺と名乗らせ、二人揃って韃靼征伐の戦に出発します。


今年は先代雀右衛門さんの七回忌だそうです。というわけでこの演目[男女道成寺] では長男の大友友右衛門が明石坊を演じ七回忌の御礼口上をのべました。現雀右衛門の花子、松緑の桜子という組み合わせ。松緑が左近ではあるけれど、冒頭の桜子の姿で踊る場面は初めて見る女方の姿で新鮮。ちょっと厳ついけれど。道成寺は華やかな見せ場たっぷりの演目で何度観ても面白い。ただ以前菊之助、海老蔵のコンビで堪能していたので、ちょっと物足りない感は否めない。

初代三遊亭円朝の人情話芝浜を基にした世話狂言。仲の良い夫婦の情愛たっぷりの人情話。酒好きで怠け者の魚屋の政五郎(芝翫)はある早朝、芝の浜辺で大金の入った皮財布を拾いました。舞い上がった政五郎は長屋の友人達を誘って朝からどんちゃん騒ぎ。宴会の始まる前に女房のおたつ(孝太郎)に拾った財布を隠した包みを預けています。どんちゃん騒ぎが過ぎて、仲間たちと喧嘩になりあげくの果て大いびき。女房の苦労もどこ吹く風。ようやく目覚めた政五郎。女房に例の包みを持ってこいと言います。おたつは何のことと?何にも預かっていないよ。
ではあの皮財布を拾ったのは夢だったのか?
深く反省した政五郎。
それから三年経った大晦日、すっかり真面目になり、酒を経った政五郎は立派な家を構えています。そこへ女房のおたつが改まって謝りたいと言います。そして見せたのは皮財布。三年経って持ち主が現れないので渡し下げられたと言います。政五郎に真面目に働いてもらいたくて嘘をついて申し訳ないと謝るおたつ。女房の愛情を感じて許す政五郎。そこへ歳末助け合いの寄付を集めに来た友人。二人は渡し下げられた財布の中身をそっくり寄付することに。めでたしめでたしの楽しくほろっとさせてくれる演目でした。

先代雀右衛門さん。晩年までとても美しく、達者な演技だったそうです。

三月大歌舞伎



今年初めての歌舞伎座。あいにくの春の嵐が吹き荒れていますが、ここに集う人々にはどこ吹く風。皆様ワクワクしているのが伝わってきます。

三月大歌舞伎。夜の部は仁左衛門と玉三郎の共演が楽しみです。

最初の演目は[於染久松色読取 おそめひさまつうきなのよみとり] 実際には大阪で起こった若い男女の心中事件を鶴屋南北が江戸に置き換えて描いたお染の七役。
浅草瓦町の質屋油屋は後家貞昌、義理の息子多三郎、娘のお染の三人家族。多三郎は芸者小糸、お染は店の丁稚久松と恋仲。久松は元々は武家の出。久松の姉竹川は午王義光の短刀紛失したために切腹した父の汚名を濯ぐべく、久松と共に短刀を探している。竹川の昔の召使いお六は鬼門の喜兵衛という悪党と夫婦になり向島の土手で煙草屋を営んでいる。このお染の七役は一人の役者が、貞昌、お染、小糸、竹川、久松と久松の許嫁お光、そして悪婆と言われるお六の七役を演じるそうです。
今夜の芝居はお六と喜兵衛が主人公。仁左衛門と玉三郎が41年振りにこの作品で共演だそうです。
お六の元に竹川から短刀が油屋にあるので、それを取り戻すために百両の金を工面して欲しいと依頼される。その日暮らしの貧乏夫婦。どうしたものかと算段していると、河豚に当たった若い男の死体が運ばれてくる。その後煙草を買いに来た客が、油屋の番頭と喧嘩になり頭を殴られて法被を破かれたという。破れた法被の代わりにと高価な羽織を貰ったという。お六に自分の身体に合わせて縫い直しを頼んで法被と羽織を置いていく。
残された法被、羽織、そして桶の中の若い男の死体。悪党、喜兵衛の頭がフル回転。死体の額に傷を付け、破れた法被を着せて籠に乗せていざ油屋へ。
ここでお六の出番。油屋の番頭達を前に羽織を見せて喧嘩が有った事を認めさせる。そしておもむろに死体を運び入れて弟が昨夜死んだと言う。そこへ喜兵衛が登場。凄みをきかせて強請りにかかる。この夫婦悪役だけど、どこか愛嬌がある。そもそもこの強請は自分の欲ではなく昔の主人の為。こういうところにも憎めない風情が出るのでしょう。うまくいきそうになったところで、丁稚達が死体にお灸を据えると死んだと思われていた死体が生き返る。ばれてしまえば長居は無用。最初渡された15両を懐に籠を担いで花道を帰る夫婦。拍手大喝采。

死体の桶の上で啖呵を切る喜兵衛。


二つ目の演目は華やかな舞踊劇、神田祭。先程の強請り夫婦とは打って変わった粋な鳶と芸者が祭の様子や、江戸の情緒をたっぷりと魅せてくれました。

美しいお2人。

泉鏡花の名作を玉三郎が演出した[滝の白糸] 水芸の太夫白糸を鴈治郎の息子、壱太郎。恋人の村越欣弥を松也が演じます。玉三郎は五度にわたり主演したそうで、最後の上演は昭和56年だそうです。
越中高岡から石動に向けて白糸と包丁投げの南京寅吉が馬車と人力車で競争しています。そもそもこの二人は何かにつけて張り合っています。しかし白糸の人気が強くて寅吉はいつも悔しい思いをしています。そこで次の公演場所までどちらが早く着くかという子供じみた競争が始まったわけです。ところが白糸の馬車が途中で故障。すると馭者の欣弥が白糸を横抱きにして裸馬に乗って突っ走って競争に勝ちます。この一件で欣弥のことが忘れられなくなった白糸、
しばらくして金沢での公演が終わった晩。月に導かれて卯辰橋で偶然再会した二人。欣弥は士族であるが父が亡くなって学業を中断して馭者をしていました。法律を学びたいと言う欣弥に白糸は学費の援助を申し出ます。
それから三年。白糸の人気も翳りをみせ、仕送りの金を工面するのが難しくなってきました。
ようやく工面できることになり、深夜借りた金を大事に懐に入れて夜道を歩いていると、金を借りることを知っていた南京寅吉達が襲って金を奪って逃げます。その時トドメを刺すため包丁を投げます。白糸は寅吉の片袖とその包丁を手に錯乱して一軒の家の軒下にたどり着きます。物音に住民が雨戸を開けると包丁を手にした怪しい女。騒ぐ住民に思わず包丁を振り下ろして殺してしまいます。家の中にあった金を奪い包丁と片袖を残して逃げる白糸。何という展開!
殺人の罪で捕まった寅吉達。白糸から金は奪ったが、殺人はしていないという寅吉。検察から裁判所に証人として出廷させられた白糸が証人席で見たのは?
白糸が仕送りした金のお陰で無事学業を収め検事になった欣弥の最初の赴任先がこの金沢裁判所。
金は奪われていないと言い張る白糸に、裁判官はもう退席していいと言います。その時欣弥が私から一言と立ち上がって白糸に問いただします。そなたの心に一点の曇りもないか…と。 欣弥の言葉に真実を語る白糸。そして舌を噛んで倒れます。欣弥が退席した後銃声が。検事殿が自殺したと騒ぐ声だけが聞こえてきます。
泉鏡花の原作では白糸は死刑になり、見届けた後欣弥が自殺するそうです。
運命の歯車が狂って非業の最後を迎える二人。松也の澄んだ声を霞ヶ関辺りの方々に聞かせたい。

初春歌舞伎公演



今年初めての歌舞伎鑑賞は新橋演舞場。海老蔵が座長の公演です。


昼の部、最初の演目は中村獅童主演の[天竺徳兵衛韓噺 てんじくとくべえいこくばなし] 鶴屋南北作の人気作品だそうで、大蝦蟇が出没したり、屋台崩しがあり、早変わりあり、獅童の宙乗りまである大スペクタクル。獅童は熱演でしたが、荒唐無稽なこのストーリーよくわからない。きっと歌舞伎通は噺の辻褄などよりも役者の演技やシーンを楽しむのでしょう。

今日のお目当は座長海老蔵の[ 寿初春 口上] 新年の幕開けにふさわしい一幕だそうです。
舞台には海老蔵一人。成田屋の紋が入った裃姿で口上を述べた後、では一つ睨んでお見せ致しましょうと言って目を向くと、観客も固唾を呑んで見守って。広い会場がシーンとなり、たちまち大歓声が湧き上がりました。凄いオーラ。

最後の演目は[鎌倉八幡宮静の法楽舞] 海老蔵が市川宗家に伝わる「新歌舞伎十八番」の一つで、133年ぶりの上演だそうです。1885年に劇聖と言われた9代目団十郎によって上演されたそうですが、大した評判にはならなかったそうです。今回海老蔵は「好評でなかったものにメスを入れるのは先人に対する敬意」と語ったそうです。その意欲の表れとして、なんと三味線連中が五組も共演します。特に珍しいのは成田屋だけの伴奏を専門にする河東節連中。宗家始め全員女性奏者です。常磐津連中、清元連中、竹本連中、長唄囃子連中の五組。素晴らしい五重奏を堪能しました。
舞台は荒れ果てた寺。夜な夜な物の怪が現れるという噂を聞き忍性聖人(右団次) らが寺を訪ねると怪しい風とともにかって白拍子だったという老女が現れ舞を披露して姿を消す。すると次々に物の怪が現れる。九代目は静御前だけ演じたそうですが、今回海老蔵は、七役全てを早変わりで演じてファンを楽しませてくれました。
そもそもこのチケットは日舞の師匠の友人が購入していたものですが、思いがけぬ入院ハプニングで回ってきたもの。私にとってはラッキーだったけれど、ご本人は病室で臍を噛んでいたことでしょう。海老蔵ファンのこの方なんと昼夜別の席で3枚ずつ購入。計6回足を運ぶ予定だったそうです!
3階のど真ん中の席。見渡すと熱烈なファンがひしめいているようで、聞こえてくるお喋りが物語っていました。

12月大歌舞伎



今年もあと数日。イベントも全て終わりプシユパム達は冬休みモードかも。

年末最後のお楽しみ、12月大歌舞伎。夜の部。

最初の演目は中車が初めて主役を張る長谷川伸作の[瞼の母]。名前はよく聞く作品だけれど、見たことはありません。ヤクザになってしまった主人公は幼い頃に生き別れになった母を探しながらの旅がらす。
幼い頃に別れた母を探している忠太郎。ようやく探した母おはまは妹お登勢の将来を考えて忠太郎に冷たい態度をとり、追い返す。しかしお登勢が母に、子供の頃から聞かされている兄ではないかと問い詰めて、二人で探しに行く。しかし忠太郎はおはまの店を狙っているヤクザと喧嘩になり殺してしまう。そこへ忠太郎を探している二人がやって来る。物陰から見送る忠太郎。瞼を閉じれば母の顔が目に浮かぶ。会いたくなったらこうやって瞼を閉じておっかさんに会うんだと名セリフ。
歌舞伎の世界に中年期から入った中車。よく頑張ったなぁと思います。

今年最後の眼福。玉三郎の楊貴妃。長恨歌と能の[楊貴妃]を題材に夢枕獏が玉三郎のために書き下ろした作品。
亡くなった楊貴妃への思いが忘れられない玄宗のために楊貴妃の魂を探し蓬莱山を訪ねた方士。蓬莱山の宮殿で楊貴妃を呼び出します。
透ける幕が左右に開き小さな宮殿の帳を上げて顔を見せる瞬間から溜息が出る美しさ。衣摺れの音をさせて舞台中央に進む様子はまるで水の上を進む白蛇のよう。二枚の扇が玉三郎の身体に纏わりつくように舞っている。美しい時間だけが流れて観客達も蓬莱山を回向している気分になります。美しいものを見ると人はいい顔になりますね。

会場に飾ってある楊貴妃のポスター。美しい!



12月大歌舞伎は三部構成なので、開演前に腹ごしらえ。歌舞伎座裏の歌舞伎そば。芝居に出てきそうな佇まいのお店。

15年くらい前に見た玉三郎の楊貴妃。

11月大歌舞伎



11月の歌舞伎座は大御所達の顔見世大歌舞伎。坂田藤十郎、松本幸四郎、中村吉右衛門、尾上菊五郎。そして先月国立劇場で霊剣亀山鉾で美しい冷血漢を好演してファンを魅了した片岡仁左衛門らが集合。円熟した芸が楽しみです。

今日は戸塚の友人と誘い合わせて。歌舞伎好きの則恵ちゃん。一緒に観劇するのは初めてなので楽しみです。

最初の演目は仮名手本忠臣蔵の五-六段目。忠臣蔵の志士の中で一番間の悪い男、早野勘平とおかるの悲劇。仁左衛門は先月の悪役から一転、何をやっても裏目に出る勘平をちょっと憐れに演じている。息子の孝太郎がおかる。
このカップル、名前は知っていたけれど、どういう事情を持つのかはこの段を見るまで知りませんでした。塩治判官が江戸城内で刃傷沙汰を犯し切腹、家名は断絶に。この主君の大事に、なんとおかると逢引していた勘平。その責から猟師になっておかるの実家で暮らしていました。ある日、火縄銃の火を借りた浪人が元同士の千崎弥五郎。そこで仇討ちのための資金調達を約束します。
勘平の心を知ったおかるは身を売る決意。おかるの父与市兵衛は女郎屋から前金を預かり夜道を急ぐ中、山賊の斧定九郎に襲われ金を奪われます。そしてその斧定九郎を猪と間違えて撃ち殺した勘平。真っ暗な闇の中、人間を撃ってしまったことに驚き、懐の金を奪って逃げ帰ります。
折しも家には女郎屋の女将がおかるを引き取りに。父与市兵衛の帰りが遅いと話している中、女将に与市兵衛に前金を払ってあるのでおかるを連れて行くと言われ、自分が殺したのは義父だったと思いこみ悩む勘平。おかるとの哀しい別れの後、腹を切ります。その後村人達が与市兵衛の遺体を運びこみ、死因が刀傷だと判り自分が殺したのではないと判り、また仇討ちの血判に名を連ねることが許され、安堵して息絶えます。
それにしてもなんとも憐れなこの二人。今月の夜の部では仇討ちを果たす男の影で人生を翻弄される女性が二人登場します。

次の演目は人形浄瑠璃でお馴染み梅川忠兵衛の新口村。坂田藤十郎と息子の扇雀がこちらのカップルを演じています。忠兵衛の父、孫右衛門を歌六。則恵ちゃんはこの作品を一番楽しみにして来たそうです。
大阪の飛脚問屋の養子、忠兵衛は馴染みの遊女梅川を見受けするためにご法度の公金の封を切ってしまい追われる身に。死を覚悟した二人は忠兵衛の生まれ故郷の大和、新口村に落ち延びます。そこへ孫右衛門が通りかかりますが、罪人なので家の中に身を隠し、障子窓から父の姿を見守ります。雪道で転ぶ孫右衛門。思わず駆け寄り下駄の鼻緒を直して介抱する梅川。その二人を見守る忠兵衛。歌六と扇雀のやりとりが涙を誘います。自分を気遣うこの女が息子の連れだと気づく孫右衛門。梅川は孫右衛門に めんない千鳥 という座敷遊びの時のように目隠しをして忠兵衛に会わせます。父の手が息子をなで、息子の手が父の手を握りしめます。
そこへ追っ手の声が聞こえてくる。親の目の届かないところで捕まってくれと泣く孫右衛門。後ろ髪を引かれながら雪の中を逃げていく二人。このラストシーンが哀しく叙情的。降り頻る雪の木立の中、黒地に同じ裾模様の着物に手拭い姿の二人が絵の様に美しい。逃避行なのに、比翼と呼ばれるペアの衣装。
これが歌舞伎の美意識か。美しい舞台に則恵ちゃんもうっとり。

最後の演目は元禄忠臣蔵 大石最後の一日。本懐を遂げた四十七名の浪士達は四家の大名屋敷にお預けの身となっています。御使役堀内伝右衛門が細川家にお預けとなっている大石内蔵助(松本幸四郎)に一人の小姓を引き合わせます。大石はその小姓が女性だと見抜きます。この女性は細川家の元家臣、乙女田杢之進の一人娘おみの(児太郎)。彼女は浪士の磯貝十郎左衛門(染五郎)の許嫁でした。なんと結納当日に討ち入りのために姿を消した磯貝の心を知りたく、必死の思いで男装して屋敷を訪れたのです。磯貝の気持ちが揺らぐのを恐れ会わせることをためらう大石。そこへ浪士全員の切腹命令が出る。今日一日の命。大石は磯貝が琴の爪を肌身離さず大事に持っていることを知っていました。それこそおみのの琴爪。大石は二人を会わせてあげる。磯貝の真心を知ったおみの。おみのに後ろ髪を引かれながらも必死に耐え部屋に戻る磯貝、恋人達の美しく切ない別れ。
おみのは浪士達が一人一人刑場に進むその場で磯貝に先立ち自害する。磯貝の腕の中、愛に順じたおみの。すぐに追いかけると磯貝。この作品は以前にも一度見たけれど、児太郎の雰囲気にあっているのかウルウルしてきました。
今日は愛しているからこそ、哀しい結末を迎える三組のカップルを堪能しました。

通し狂言 霊験亀山鉾



国立劇場で今月開催されている通し狂言 霊験亀山鉾は14年振りに片岡仁左衛門主演で話題になっている演目です。

仁左衛門が悪役、それも二役演じるというので楽しみも倍増します。歌舞伎通の姐さんから昨日の公演後に期待が高まるメールをいただきワクワクしながらようやく到着。実は永田町乗り換えで何も考えずに渋谷行きに乗って青山というアナウンスにビックリ‼️慌てて反対の電車に乗って無事着いたところ。久しぶりの国立劇場、しかも歌舞伎は初めて。さてどんな雰囲気なんでしょうね。おまけに今日は千穐楽。25日間無事務めた役者達にとってもいい日ですね。

元禄14年に伊勢国亀山城下で実際に起こった仇討ち事件を鶴屋南北が戯曲にしたそうです。悪役の主人公、浪人の水右衛門は剣術の試合に負けた腹いせに遠江国浜松の家中、石井右内を闇討ちします。これだけでも卑劣なのに仇討ちに来た石井家とその所縁の人々ー右内の弟兵介。養子の源之丞。家来の轟金六。源之丞の愛人で身重の芸者おつまなどを、次々と卑劣な手段で返り討ちにします。最後は源之丞の妻お松と息子源次郎、お松の兄で石井家の下部袖介が仇を討ち本懐を遂げます。
なぜこんな男が主役? 実はこの水右衛門、役者の様ないい男でその徹底した冷血漢振りが不思議な魅力をもたらしています。彼の父親藤田卜全は著名な剣術家で息子を溺愛。普通なら勘当するところ、この父は身を隠している息子ヘ送金したり、仲間に身の安全を頼んでいます。そこで水右衛門側と石井家側との丁々発止の攻防戦が繰り返えされるのです。
先ず石井の弟が仇討ち免状を持って果し合いを行なうが、なんと後見の掛塚官兵衛は水右衛門の仲間で、石井の水盃に毒を仕込む。試合の途中で倒れたところに留めを刺して殺害。
石井の養子、源之丞にはおまつという女房と幼い息子がいます。この息子は生まれた時から脚が悪く、人間の肝臓を飲めば治ると言われています。この設定も凄いですね。
源之丞は雲隠れしている水右衛門を探すために商人になりすまして三年近く丹波屋という揚屋に出入りしています。そこで石井家の下部の妹の芸者おつまといい仲に。
そして、なんとこの丹波屋に水右衛門が匿われているのです。ここに水右衛門そっくりな隠亡の八郎兵衛、揚屋の女将、官兵衛などが絡みます。
源之丞と下僕が水右衛門のだまし討ちに会い、二人とも果てます。水右衛門の身を案じた女将が彼を棺桶に入れて逃す算段の中、他の寺から担がれて来た棺桶と取り違えられて焼き場の火の中ヘ。そこへおつまが源之丞の仇を討ちに現れ、隠亡の八郎兵衛と本雨の中で壮絶な立ち回り。
この焼き場での立ち回りが本公演の最大の見せ場。八郎兵衛と水右衛門の二役を演じる仁左衛門は磨き抜かれた悪の美を余すことなく発揮します。全てのシーンを錦絵のような絵面で見せ、観客の目に焼き付けてきます。先ず八郎兵衛とおつまが雨の中争いおつまの帯が解けて、手繰り寄せる八郎兵衛。その八郎兵衛の隙をついて井戸に落とすと、隣で燃えている棺桶がパーンと割れて水右衛門が現れる。水と火と早変わり。美しく、残虐な男は先ず腹の子から刺し殺していきます。どの場面も型が美しく決まり、魅入ってしまいます。フーッという観客の溜息が聞こえてきそう。
源之丞の母貞林尼はお松との結婚を反対していましたが、実は何年も前から密かに生活の援助をしていました。そしてついに結婚を認めると訪ねて源之丞の位牌をお松に渡します。仇討ちを誓う息子源次郎。貞林尼は自ら胸を突き肝の臓を源次郎に差し出します。祖母の犠牲で歩けるようになった源次郎。お松と袖介の三人で、蘇我八幡宮の祭礼の日についに宿敵水右衛門を討ち取ります。
舞台いっぱいに咲き誇る悪の華。



舞台転換に瓦版が撒かれてラッキーな観客の手に。最初の弟兵介が敗れた時の様子。

マハーバーラタ戦記



10月の歌舞伎座、昼の部はインドが誇る大叙事詩マハーバーラタの通し狂言が行われています。日印友好交流年に定められたことを祝し、日印友好の架け橋となるべく、インドで愛され、語り継がれてきた神話的叙事詩と日本の誇る芸能、歌舞伎がどのように掛け合わされるのか?
インド好き仲間達、歌舞伎好き仲間達との間で話題になって楽しみにしていました。あんな膨大な話をどのように料理するのだろうと。






菊之助とお弟子さん達がインドに行ってスチール写真などを撮ってきたそうです。さて、どんな旅だったのでしょうかね。多分もう二度とインドなんて行きたくないと一度は思ったと思います。それなのに帰国すると懐かしく思い出しているのでは? 楽屋内ではナマステとインド香が流行ってるそうな。








あくまで歌舞伎にインドのエッセンスを加味して、どちらの良さも損なわない。上手にインドというスパイスを使っています。脚本、演出、衣装、音楽、背景。演出の宮城氏は歌舞伎の手法を存分に使わせていただいたとコメントしていました。東西の花道を掛けたので両軍相見対する戦闘シーンも迫力がありました。一流の方達が役者を支え、より面白い舞台を作ろうとする気持ちが伝わる舞台になっていました。











天界では神々が愚かな行為を繰り返す人間達をどうしたものかの会議中。太陽神(スーリヤ神=左団次)は愛こそ人間を救う道だと説き、帝釈天(インドラ神=鴈治郎)は力こそ救いになると両者譲りません。


そこでどちらの神も地上の女性に子供を授けその行方を見守ることに。選ばれた美しく気高い女性が象の国のクンティ姫(汲手姫=梅枝)。クンティは結婚もしていないのに太陽神の子供を身ごもりこれを恥じてガンジス川から流すことに。玉のような男の子は耳に金のピアスをして誕生。ガンジス川を下って優しい養父母に拾われてたくましく優しい青年に育ちます。これが勇者カルナ(迦楼奈=菊之助)の誕生秘話。このカルナを主人公にしたのは何故だろうと考えると、登場人物の中で一番の中庸の人物だという事。最終的には百王子側につくけれど、彼は五王子の兄で、神から平和を託されているが公には出来ない。実の母、兄弟達に名乗れない孤独な存在です。この複雑さと悲劇性が正に歌舞伎のヒーロー。






しばらくしてクンティは帝釈天の子供も身ごもります。しかしこの時はすでに結婚していたので堂々と出産。これが五兄弟の三男アルジュナ(阿龍樹雷=松也)です。ほかに長男ユディシュティラ(百合守良=坂東彦三郎)。次男ビーマ(風韋摩=坂東亀蔵)。ほかの王妃の生んだ双子ナクラ(納倉=中村萬太郎)とサハディーヴァ(沙羽出葉=中村橋之助)がいます。そしていとこたちが百人。長男ドゥリョーダナをこの芝居では七之助扮する長女(鶴妖朶姫)に置き換えています。七之助が貫録があって素晴らしい。


異父兄弟との葛藤。五王子と百兄弟の確執。お馴染みの国を賭けた賭博シーン。この場ではユデイシティラのお人好し。奸智に長けたドゥリョーダナの凄みが際立ちました。カルナが聖者にかけられた呪いで戦車の車輪が外れるエピソード。親類同士の戦いに悩むアルジュナにクリシュナ(仙人ク理修那=菊五郎)が見せる一切相(ヴィシュヴァルーパ=万物の根源としての自分の姿)など、インド舞踊や芝居、映画などで外せないエピソードはシッカリ入っていてよくまとめたなと感心。2~3年前から構想していたそうです。納得。














今日の席は2階の二列目ど真ん中。屏風形の背景と回り舞台がよく見えるいい席で大満足。


このスチール写真、インドで撮影したそうです。リシケシか、ハリドワールか



歌舞伎座のHPに出ていた写真を参照します。女性カメラマンのリポート。


冒頭の神々の会議の場。カタカリ風の衣装が素敵。白と金の色遣いがゴージャス。背景もインドインドではなく、三月堂をイメージしたそうです。ここに写っている背景は屏風のようにたためて真っすぐにも、屏風形にも、両端を合わせて大きな筒のようにも使って舞台に様々な表情を与えています。




児太郎扮するドラゥパティ(弗機美姫)が象に乗ってお目見え。叙事詩では婿選びの競技に勝ったアルジュナが姫を伴って帰宅し、母クンティに素晴らしいものを得ました伝えたが、母は姫を見ずに食べる物だと思い兄弟五人で仲良くわけるようにと言います。一度口にした言葉は神聖なので守らないといけません。そのため五王子たちの共通の妻になったといわれています。翻案ではそれではあんまりだと考えたのか? 松也扮するアルジュナの婚約者になっています。楽しい婿選びの様子が演じられます。






クンティの長男ユデイシティラは法を司るダルマ神との子供。正義感に溢れ秩序を守る性格です。風神とクンティの間に生まれたのがビーマ王子。風のように疾る血気盛んな性格です。このクンティという女性は凄いですね。神様との息子を三人も生むなんて、
この場はビーマと森に住む魔物の娘、森鬼飛(梅枝)の恋の道行。





最期の戦いに臨むカルナ。



七之助演じる百王子の長女、鶴妖朶姫。今回この役を女性にしたことで、どちらかというと悪役キャラが目立つ百王子側の正統性が際立ちました。そもそもこちらが本家、五王子側は分家です。七之助の魅力で両者のバランスがよくなったようにみえます。また、カルナと同じく孤独を抱えている人物に描かれているので、この二人の友情を超えた男女間の愛情も感じられました。そして虚しい戦に進んでく人間の悲劇も。



五王子達、長男、二男、三男と並ぶ様子。赤い顔がビーマ。



クリシュナ役の菊五郎。

この通し狂言を見てインド神話と歌舞伎がとても似た世界観を持っていると思います。天命、義理、友情、破天荒な主人公。荒唐無稽なストーリーなのにすんなりと受け入れられる不思議。楽しい舞台でした。

劇団新感線



シネマ歌舞伎で染五郎主演の劇団新感線の阿弖流為を見て一度生の舞台を見たいなと思っていたら、やっとチャンスがきました。友人の晴子ちゃんの唯一の趣味が向井理君。超美人なのに仕事以外に興味を持たなかった晴ちゃん。今では向井君が出演する舞台、映画はしっかりチェック。チケットを取る苦労も厭いません。という訳でチケットを取るのが難関と言われている新感線の前から四列目の神席をゲット。ファンのパワーは凄い。


今話題の豊洲市場前にオープンしたℹ︎Hℹ︎ ステージ アラウンド 東京。今年から来年にかけて一年三カ月の杮落としに選ばれたのが劇団新感線の名作、髑髏城の七人。このロングランヒットの作品を花鳥風月、極の五つのタイトルで、それぞれ異なる俳優陣、演出で上演するというファンならずとも気になる企画。おまけにこのアラウンドステージ。ドーナツの形のステージとスクリーン。真ん中の穴に客席があって客席が向きを変えるという。
はて? 百聞は一見にしかず。
晴ちゃんは向井君。私はステージの構造に胸ときめかせていざ劇場へ。


さあ〜ここから客席へ。中は撮影禁止。壁にかけてある座席表。前から四列目。しかも今日は撮影日なので前二列が使用禁止。ステージがより近い。
ロックの響きと共に開演。客席がグーンと回転してプロジェクションマッピングの映し出されたスクリーンが開いて役者が登場。スピーディな展開、マッピングやステージの特徴を生かした演出。役者が荒野を歩くシーンでは客席にも一瞬風が吹き渡る。楽しい体感と美しい役者達に休憩を入れて四時間弱の芝居もあっという間。


初めての新感線体験。芝居も劇場も楽しくて、帰りの車中では二人共テンション高い。

団菊祭



今月の歌舞伎座は団菊祭。7世尾上梅幸、17世市村羽左衛門 の追善興行と銘打ち、坂東彦三郎改め葉善。亀三郎改め彦三郎。亀寿改め亀蔵。亀三郎の息子が新亀三郎を襲名する親子三代のめでたい襲名披露もおこなわれました。先日テレビで放映された歌舞伎座で行なわれた俳優祭。若手役者達を仕切っていたのが亀寿。声がよく、中堅俳優として頼もしい。

最初の演目は 壽曽我対面。まさに歌舞伎の様式美。富士の巻狩りの総奉行に任じられた工藤左衛門祐経 (菊五郎)の屋敷にずらりと並んだ諸大名。そこへ曽我十郎、五郎の兄弟が現れ、弟の五郎が父の仇と工藤を討とうと迫ります。しかし兄の十郎は弟を諌めます。それを見た工藤は紛失した源氏の家宝、友切丸を見つけよと諭します。
そこへ折良く現れた曽我の家臣が友切丸を手に駆けつけます。工藤は兄弟に打たれる覚悟を決めて、2人へ狩り場の通行手形を与え再会を約束します。全てお約束どおりの絵巻物のような華やかな一幕。最後の大見得シーンの代わりにここで襲名口上。なるほど、色々なパターンがあるのですね。


華やかな襲名口上の後は、伊達騒動を背景にした時代物大作、伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ。1度見たかった作品なので嬉しい。
御家横領を企む執権、仁木弾正(海老蔵) らの経略により乳母の政岡(菊之助)は、若君 鶴喜代を守るため息子千松と共に御殿の奥に籠っています。毒を盛られるのを恐れて食事も自分で作って与えています。支度が遅くなったある日、若君は武士の子は食べなくてもひもじゅうないと言います。子役2人がけなげです。
この後、管領山名宗全の妻栄御前が見舞いと称して毒入の菓子を持参して若君に勧めます。かねてから若君の毒見をするよう教えられていた千松は菓子を取り一口食べてもがきます。それを見た仁木の妹八汐が、この不届き者と千松を壊刀で刺します。幼い千松をチクリチクリと責め殺す歌六の表情の恐ろしさ……。
千松が殺されるのを見ても顔いろを変えない政岡を見て 取り替え子をしたと早合点した栄御前は、仲間だと思いこみ、悪事を画策した一味の連判状を渡します。
皆が去った後、千松の遺体を抱きしめ号泣しながら、お前のおかげで一味の悪事を証明する証拠が手に入った。ようやった、ようやったと息子に語りかける政岡。
この政岡は女形の中で最高の大役だと言われている難しい役だそうです。確かにこの心理描写は難役。
その夜、政岡の本当の忠義心を知った八汐が連判状を取り返しに来ますが、政岡に殺されます。しかし妖術を使い鼠に姿を変えた仁木弾正が連判状を盗んで床下へ逃げます。
場が変わって床下で宿直をしていた忠臣荒獅子男ノ介(松緑)が鼠を捕らえようとしますが、取り逃がしてしまいます。鼠姿の役者が、花道のスッポンに落ちると入れ替わりに海老蔵の仁木弾正が煙と共に出没。薄暗闇に怪しい魅力を見せてくれます。この短い場は男ノ介の荒事と仁木の怪しい美しさで歌舞伎のエッセンス満載。
いよいよ大詰め。対決、刃傷の場。鶴喜代の老臣、渡辺外記の訴えにより幕府の門註所(裁判所)で仁木弾正との対決が行われる。弾正に加担している山名宗全が外記を罪に落とそうとするところへ、出張中の細川勝元が戻ってきて仁木弾正の罪を弾劾し、外記側が勝訴となる。
罪に服した弾正は控えの間で前非を悔い改めたと外記に近づき、隠し持っていた短刀で襲う。館は大騒動になり、瀕死の外記は人々に助けられ弾正を殺す。そこへ届いたのが御家存続の吉報。
この仁木弾正が敵役の大役だそうです。堂々とした傲慢不遜な面構え。妖術を使う怪しい色気を持つ悪人。こう書くと海老蔵にぴったりのはまり役のようだけれど、何か物足りなさを感じます。自分の持ち味だけに頼ってはいけないんということかしら?
一度見たかった先代萩、玉三郎と吉右衛門だとどんな芝居になるでしょうか?


最後の幕は松緑と襲名した亀蔵、2人の華やかな舞踊。屋台の山車に飾られていた神功皇后と竹内宿彌の人形に魂が入り語ります。そこから一転、2人の漁師に善玉、悪玉が乗り移り軽快に踊ります。さらに一転、文殊菩薩が住む天竺の霊地にある石橋。獅子の精が現れ勇ましく毛を振り、獅子の座へと直ります。亀蔵は踊りの名手松緑の胸を借りて立派に相手を務めています。最後に石橋がなかったら、コミカルなだけで寂しすぎる幕。派手な毛振りがあってようやく観客の気持ちも収まりました。

お祝いの幕。

この四方が今日の襲名の主役。

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