映画・テレビ

ハロルドとリリアン



今月は歌舞伎に行けなくてがっかりしていたら、友人から楽しいハガキが届きました。
彼女が見た最近の映画の紹介です。昔、淀川長治さんという楽しい映画評論家がおりました。淀川さんが語る映画愛が楽しく、紹介されるとすぐにでも見たくなりました。友人のハガキはまさに淀川さんの語りのようで、思わず上映時間を調べてしまいました。上映館は恵比寿シネマガーデン。タイトルは『ハロルドとリリアン)

ハリウッド映画全盛の1960〜2000年にかけて絵コンテ作家とリサーチャーとして活躍した仲良し夫婦の映画愛、家族愛たっぷりの人生を紹介しています。
初めて担当した 十戒 の絵コンテで認められたハロルドは ウエストサイドストーリー、鳥、 卒業 などの映画の名シーンを描いて監督に素晴らしいイメージを与えます。リリアンは映画をよりリアルに味わい深くするためにあらゆる物をリサーチします。
親の暴力が原因で孤児院で育ったリリアン。第二次世界大戦の兵役から戻ったハロルドと恋に落ちるが、家族の反対にあい、新天地ハリウッドに駆け落ちした若い夫婦。激動のハリウッドで失業、移籍などを繰り返しながら三人の息子を育てます。待望の長男は当時まだ広く認識されていない自閉症と診断されます。リリアンの明るい、挫けない性格が長男をしっかり自立できるように導いた姿に感動。好きな仕事を得て、愛に溢れた人生を歩んだカップルの楽しい映画です。

ザ-ダンサー



1900年初頭、パリのフォリー-ベルジェールの観客を熱狂させたロイ-フラー。モダン-ダンスの祖と言われたロイは白いシルクのドレスをまとい照明の効果を活かしてまるで暗闇の中から光の花が浮かび上がるような舞台を創造したそうです。
女性によるダンスが卑しいものとされていた時代に自分の信念、情熱、美意識に忠実にひたむきに踊った女性。この映画はそのロイの舞台芸術に捧げる熱い思いを描いています。
イサドラ-ダンカンの名前は知っていたけれど、ロイ-フラーの名前は知らなかった。実はイサドラを見出したのはロイだったそうです。
ロイは踊っただけではなく、カラーフィルターを使った照明や舞台衣装などの開発もして、現代の舞台芸術や振り付け師達にも大きな影響を与えているそうです。
この映画では歌手のソーコがロイを熱演。自分の羽を抜いて反物を織るおつうのようなひたむきさとエキセントリックな姿が胸に迫ります。
実在したロイは芸術や化学や上流階級の人々との親交があり、色々な分野に貢献できた充実した人生を送ったようです。
残されたロイの写真や絵をもとにこの映画のために振り付けられたダンスシーンは圧巻です。

僕とカミンスキーの旅



先日映画好きな友人から、字が踊っているハガキが届きました。面白い映画を見たので早く知らせたいという気持ちがビシビシ伝わってきて、思わず私も見たくなりました。この時節、電話やメールで興奮を伝えたくないという友人の心意気がうれしいね! さよならレーニン の監督だそうで、期待大。恵比寿まで行って来ました。


マチスの最後の弟子だったカミンスキー。60年代、モダンアートの波が押し寄せていたニューヨークで時代の寵児となったカミンスキー。視力を失い、盲目のアーティストとして脚光を浴びながらスイスに隠遁。謎の画家として常に画壇の噂になっている。
落ち目の美術評論家が彼の自伝を書こうと接近。ひょんなことからカミンスキーの昔の恋人の所在が分かり、二人で会いに行く羽目に。この評論家が傲慢で鼻持ちならぬ嫌な若者。どっこいヨボヨボなカミンスキーは彼を上回るワンマン。この2人の珍道中がおかしすぎる。最後には2人が可愛いく見えてくるから映画って面白い。ポップアートが沢山出てくるし、皮肉なジョークも満載。

雪之丞変化



日本橋のビルの谷間に鎮座する福富神社。サラリーマン達の憩いの場でもあります。この一角のシネコンが今日のお目当。



朝10時の映画祭と題した名画座。朝一回だけの上映ですが、見損なった映画を見るチャンス。私の触覚に触れたのがこの作品。
江戸時代の歌舞伎役者が主人公の 雪之丞変化
子供の頃、近所に住んでいた同い年の女の子が映画を見て夢中になって、すっかりなりきっていたのを思い出しました。幼い少女の心を鷲掴みにした主人公の魅力に迫りたい。
長谷川一夫が主役。山本富士子、若尾文子、勝新太郎、市川雷蔵、先先代の中村鴈治郎、先代市川中車とそうそうたる顔触れ。監督は市川崑。脚本は奥様の和田夏十。
まるで歌舞伎の舞台を見ているようなシーン割り。
長谷川一夫といっても知らない人が多いかもしれないけれど、その昔一世を風靡した二枚目俳優です。かく言う私も映画で見るのは初めてです。雪之丞と闇太郎という義賊の二役。女形の独特の色気を持つ歌舞伎役者と、いなせな義賊の二役を見事に演じていて、なるほど人気を博した訳です。それぞれの役者さん達もべらんめいな口跡も気持ちよく、美しいので目が喜びます。市川監督ならではの映像美も堪能できます。
この時代の悪党は悪は悪でも悪事がばれたらしっかり腹をくくる潔さがあります。今の誰かに見習わせたいと思ったのは、私だけではないでしょうね。

今日は時間がなく、ゆっくりお参りできませんでした。可愛いお守りがあるそうです。次回を楽しみに。

文楽シネマ



歌舞伎シネマはポピュラーになったけれど、今朝、東京写真美術館ホールまで出掛けて見たのは文楽シネマ。朝一回だけの上映。しかも今月一杯ということで慌てて見に行きました。

この映画は日本の伝統文化、特に人形浄瑠璃-文楽に魅了されたカナダ出身のマーティ-グロス監督が文楽の演者達の協力を得て制作した作品。38年前に太秦でセットを作って撮影されたそうです。主要な出演者10名が人間国宝に認定されており、すでにご逝去された方も多く、昭和を代表する文楽名人の至芸を堪能出来ます。


演目は冥土の飛脚。遊女梅川と飛脚問屋の後継養子忠兵衛の駆け落ち物語。
世界には人形劇はたくさんあるけれど、こんなに表情豊かで、人情の機微を表現できる人形遣いはないですね。忠兵衛を遣っているのは立役の最高峰と歌われた初代吉田玉男。さすがの色気。男のプライドを傷つけられた忠兵衛がかっとなって公金の封を切ってしまう場面。人間と人形が同化していました。
淡路町の段。封印切りの段。新口村の段。の三段で構成されていますが、どの段の太夫も三味線も素晴らしくて、改めて義太夫の迫力に感嘆しました。
この映画は海外で上映されたものの日本では劇場公開されなかったそうで、幻の文楽映画と呼ばれていたそうです。2010年にデジタルリマスターされて2011年3月に同ホールで公開されたそうです。震災の時期と重なりますね。やっと公開されたにしても大変だったことでしょう。今回少しでも多くの人が見ることができるといいですね。
駅の近くにカレー屋さんを見かけて思わず吸い込まれてしまう。来週インドへ行くのに、うっかりしてた。

ショコラ 君がいて僕がいた



封切られてすぐに観た友人から、とてもよかったからぜひ観るようにと、おすすめの手紙を頂いた映画。友人はこの時世に何か伝えたい時にすぐハガキや手紙をくれます。そうすると受けた私もすぐに観たくなる。うっかりしていると見逃してしまうので、ちゃんとチェックして観てきました。

19世紀から20世紀初頭のパリで活躍した実在の白人と黒人の道化師コンビ。まだ人種差別が激しく、植民地博覧会なるものが堂々と開催されていた時代。そんな時代に人気者になった二人の栄光と苦悩と挫折。
かって一世を風靡したにもかかわらず現在落ち目のフティットはあるサーカスで野蛮人役の黒人に出会いコンビを組もうと誘い二人でパリに出て行く。
白塗りしたフティットはツッコミで黒人ショコラをからかったり殴ったり。ボケ役のショコラは殴られながらもうまくタイミングを外したりして、その間の良さでたちまちコンビは人気者になる。二人の身体能力、特にフティットのそれは素晴らしい。このフティットを演じているのが実はあのチャップリンの孫だそうです。両親が経営しているサーカスで育ち四歳でデヴュー。パフォーマーとしてヨーロッパで活躍しているジェームス・ティエレ。さすがの動きはおじいちゃまのDNA。
性格の違うふたり。禁欲的で芸にこだわるフティット。人気者になってサーカス時代の恋人を忘れ酒やギャンブル、女に浸るショコラ。そこにはなぜ自分が殴られ役なのか、自分が殴られのを楽しむ人種差別的なものを常に感じている苦悩があるからだろう。そして証明書がないことを密告されて刑務所に召喚され拷問を受ける。そこで出会ったインテリハイチ人。彼に芸術は風穴を開けることだ。黒人のお前だからこそオセロを演じろと鼓舞される。ショコラをよく理解してくれる美しい看護師は医者の夫に先立たれ息子と暮らしている。彼女の勤めている小児病院に慰問に出かけ、そこで知り合った劇場主。彼らの応援でオセロに挑戦するショコラ。アクロバティックな動きや軽妙なコントは得意だが、シェークスピアの台詞回しに苦労してくじけそうになる彼を励ます二人。ついに初日を迎えたオセロ。素晴らしい舞台だったにもかかわらず、黒人が芝居をやるなとブーイングの嵐。傷ついた彼に追い打ちをかけるようにギャンブルの借金の追い立て屋に襲われ身も心もボロボロ。結局その後コンビは解消。数年後に亡くなってしまいます。
実際のコンビも10年で解散、ショコラは1917年に亡くなったそうです。この映画の最後に映画を発明したリュミエール兄弟が撮影した実際のコンビの映像が流れます。コミカルでオーラに溢れた絶頂期の二人のなんとも軽妙な動き。ヨーロッパでのコメディアンは日本の狂言師のようなポジションではないかしら? 深い厚みを感じます。


フランス人が見たインド



先日、姉と一緒に見に行ったルルーシュの新作。初めて訪れたインドに魅了されて撮った映画だそうです。名作『男と女』をリアルタイムに見た私達。この映画の男女はどんな恋愛を展開するのだろうか?

有名な音楽家のアントワーヌとフランス大使夫人のアンナ。ボリウッド映画の音楽を担当するアントワーヌをゲストに開かれた晩餐会で出会った二人。人生を楽しみ、恋を楽しみ、飄々と生きてきたアントワーヌ。神秘なる世界に憧れるアンナ。二人の会話が楽しい音楽のように流れる。
アンナが妊娠を願い聖地巡礼の旅に出るという話を冷やかすように聞いていたアントワーヌだが、頭痛が激しく病院で脳に腫瘍があるかもしれないので精密検査をするように言われと…。
アンナの後を追いかけ、一緒に巡礼の旅に出てしまう。
主人公二人はまるで自由気まま。周りの人たちを振り回しているように思えるが、ここにルルーシュの隠し味。
フランス人て面白い。アンナに翻弄される大使も、アントワーヌにヤキモキする結婚願望の強いピアニストの恋人も、根はやっぱりマイペース。実はアントワーヌの母は昔女優で映画で共演した役者と一夜を共にして生まれたのが彼。小さな頃に父親のことを尋ねると母はろくでなしだから会う必要ないと教えてくれなかった。その母が死ぬ前に教えてくれた父。その父はやはり今でもろくでなし。だけど飄々としていてなんだか可愛い。周りの皆にたかって暮らしている父親に初めて会いに行くシーンが何とも言えずにいい。母親の若い頃の写真を見せると、懐かしそうに名前を呼び1977年の映画で出会って恋をしたという父。それを嬉しそうに聞くアントワーヌ。父を引き取り一緒に暮らしているとさりげないシーンで暗示。彼の本来の優しさがかいま見られる。
映画の中で二人はガンジス川の上流の聖地からアンマに会いにケーララまで旅をして心を通わせていく。アンマにハグされ心が解放された二人。一夜を共に過ごします。同じ頃、デリーのフランス大使館では連絡のつかない二人にヤキモチする大使と、彼を追ってインドに来たピアニスト。
翌日帰ってきた二人を空港へ迎えに行ったもう二人。眠れぬ夜を過ごした四人の男女が出した結論は。皆別れてそれぞれの道を。
それから数年。ニューヨークの映画の仕事を終えてパリに帰って来たアントワーヌ。父親が車で迎えに来ています。ここも父親が微笑ましい。ふとアントワーヌ、アントワーヌと呼ぶ声が。そこでアントワーヌが見たのは?
さりげない、たくさんのシーンが暗喩するものが最後の10分で展開されて気持ち良いエンディングを迎えます。
最初は鼻持ちならないと感じる二人が最後はとってもチャーミング。
脇を固める大使、ピアニスト、アントワーヌの父親、それぞれ味わい深い。インド人俳優は皆濃い顔なのに主人公の気ままさの陰に隠れて羊のよう。インドが舞台だけどやはりフランス映画ですね。
姉はインドが舞台になっている映画を見ている時に、ごちゃごちゃした市場が出てくると必ずこの質問をします。『今でもこんな感じ?』

ラスト・タンゴ



先日見た映画ラスト・タンゴ。アルゼンチンタンゴの伝説のペア、マリア・ニエベスとファン・カルロス・コペス。二人の出会いからペアを組んでデヴュー。華麗なショーを各地で開催し世界中を席巻。男の裏切り、別れ。許し合い。二人の情熱的な生き様をロード・ムービーの天才監督ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮をとったドキュメンタリー映画。
若いダンサー達が演じる若かりし頃の二人の様子も素敵。ヴェンダース監督の演出が冴えています。ドラマとドキュメンタリーで彼らのダンスに捧げた思い。時代の熱狂が伝わってきます。ダンスシーンが圧巻。アルゼンチンタンゴの魅力にあふれ、こんな濃厚なダンス、ペアで踊れば 相手に特別な気持ちが湧くでしょう。愛情が冷めたら、一緒に踊るのは難しい。ファンは他の女性との間にもうけた娘と踊っています。その娘はマリアには敵わないと言っています。これは私が見ても一目瞭然でした。ファンは最高のダンスパートナーを失ったわけ。だからこそのドラマティックな人生か。
現在80歳のマリアも83歳のファンも華麗なステップを見せてくれます。いつか踊れなくなる日が来たら淋しいだろう。マリアが語る言葉が心に染みる。マリアは写真よりも映像で見る方がチャーミング。素晴らしい脚をしています。👠

女神は二度微笑む…

去年のエアインディアの機内で見た映画。面白くて引き込まれていたのに途中でデリーに到着。タイトルを見なかったのでなんという映画か判明しなかったのがなんと、年明けになって渋谷のユーロスペースで上映されたのでした。情報を知った時には終映されていて臍を噛みました。この映画を見た人に聞くと、皆衝撃のラストだと口を揃えていいます。頭の中は妄想で一杯。見たいよー。
先日、友人から柏のキネマ旬報シアターで上映されるという情報を得ました。

柏ってどうやていくのだろう? インドよりも遠い感じがする。でもこの機会を逃したらしばらく見ることができないかも~。という訳でやってきました。蕨からだと武蔵野線で新松戸へでて常磐線に乗り換えるといいらしい。  武蔵野線の中でしっかり爆睡。新松戸へ行く途中はのどかな景色が展開されていました。常磐線の乗り換えも簡単。  ここで初めてこの線が千代田線に乗り入れている線だと気がつきました。視点を変えると新鮮。柏の駅は大きかった。西口の駅を出るとローカルな雰囲気でなかなかいい感じ。キネ旬シアターは駅のすぐそば。


チケットを購入。奥にカフェが併設されているのでコーヒーを飲みながら久しぶりにワクワクしながら上映待ち。
映画は冒頭からグイグイ引き込まれていきます。1980年に私が最初に降り立ったインドはカルカッタ。今のコルカタです。この映画はコルカタが舞台。  懐かしい風景や、すっかり近代的になった街並、変わらない人々の暮らしぶりが出てきて思わず顔がほころびそう。ロンドンからコルカタに仕事できて行方不明になった夫。身重の妻が行方不明の夫を探して歩くが、勤務先にも宿泊先にも夫の痕跡が一切なく夫の存在すら証明できない。ヒチコックの「見知らぬ乗客」のような不気味な雰囲気。

そんな窮地に立たされた美しい人妻。そして彼女を助ける若い警察官。ドゥルガー女神の祝祭を控えた活気ある街。怖〜い殺し屋。可愛いボーイ君。思いがけないどんでん返し。語りたいけれど語るわけにいかない・・・。初めて見たインドのサスペンスはとっても上質。タイトルのKAHAANI は物語という意味。なるほどねと最後にわかります。インド人のおじさん達のジョークで笑っていたのは私だけでした。このユーモアのセンスの主はと思ったら、やはり字幕は松岡さんでした。

セヴァスチャン・サルガド

Photo写真の好きな友人からもらったこのチラシ。まさに神様が降臨してくる様な美しい風景に目が釘付けになりました。この写真家の名前はセヴァスチャン・サルガド。ブラジル出身の71歳。やはり彼の写真のファンであるヴィム・ヴェンダース監督とセヴァスチャンの息子のジュリアーノが共同で監督を行った映画「セヴァスチャン・サルガド 地球へのラブレター」を見てきました。最近の渋谷はごちゃごちゃしていてなるべく行きたくないけれど文化村があるので仕方ない。私としてはイメージフォーラムがある宮益坂のほうが歩いていても気持ちがいい。

ミリオンダラーホテルやブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ、ピナ・バウシュなどの素敵な映画を撮っているヴェンダース監督がどういう映画を見せてくれるのだろうかという期待にワクワクしながら見てきました。

Photo_2映画の冒頭に出てきたのはブラジルの金の鉱山で働く男達を撮った信じられないような写真でした。写真家が語っているようにその写真はバベルの塔やピラミッドの建設現場のように見えます。すり鉢状の巨大な深い穴にかけられた無数の梯子。蟻のように穴に潜って土を掘り、その土の袋を担いでまた地上へと昇っていく。写真家は言います。まるで奴隷のように見えるが奴隷ではなく、自由意志でここへ来た男達ばかりだと。言い換えれば金の奴隷で、一獲千金をあてたものは二度と戻ってこないと。

最初の写真から心をわしづかみにされました。写真家と監督のエネルギーに圧倒されます。70年代から写真を撮り始めた写真家はルワンダの虐殺の現場や飢饉の土地、フセインによって焼かれた油田、その火を消すために世界中から集まった消防士。難民や移民、死や破壊、腐敗などをテーマに作品を発表し続けてきました。

息子のジュリアーノにとって「危険な場所に出かけて取材する父親はヒーローだった。でも帰宅すると黙り込んでいた」と子供のころを回想します。ルワンダの虐殺を取材した後は社会に絶望していたといいます。その後環境問題へ意識が向かい、乱伐で荒廃したブラジルの一族の土地に植林をして広大な森を復活させたそうです。そして取り組み始めたテーマがGENESIS・創世記。ガラパゴスやアラスカ、サハラ砂漠やブラジル熱帯雨林など生と死が極限に交わる未開の場所をカメラの収めているそうです。私が最初に見たチラシの写真はアラスカで撮られたものだそうです。

父親不在で育ち、いつの間にか父との間に確執が生じてきた息子。そんなある日、父が撮影に誘ったそうです。2009年から取材に同行したジュリアーノは父が被写体に迫るときの距離感に驚いたといいます。セイウチやシロクマの取材でも転がるように近くに寝そべって被写体に迫っていくそうです。まるでセイウチやシロクマが笑っているようにしか見えない写真。パプアニューギニアやアマゾンの奥地の原住民たちとも同じ目線で物を見て、すぐに打ち解けるそうです。被写体の顔が皆イキイキしています。父との撮影旅行を通じて父親を理解できた息子は「父は世界の証人。偉大さがわかり、その沈黙の理由もわかった気がする」と言っています。

小さな映画館ですが見事に満席。映画が終わった後に皆で拍手しました。happy01

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