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2017年9月

オンザミルキーロード



以前見たアンダーグラウンド。あのエネルギッシユで不思議な世界を描いたエミール-クストリッツァ監督の最新作と聞き、これは何を置いても見なくては。
先日銀座に友人の個展を見た帰りに日比谷シャンテに行ってきました。
今回は監督自ら主役の牛乳配達人コスタを演じ、イタリアの宝と称されているモニカ-ベルッチがヒロイン。とある国のとある村。戦争に巻き込まれ多国籍軍との銃撃戦が繰り広げられれている中、ロバにまたがり毎日軍営にミルクを運んでいるコスタ。音楽家だったが戦争で過去も自分自身も封印。大きな農場の娘に愛されているが、執着心なし。この娘の兄は戦争で活躍した村一番の英雄。兄のために娘は難民キャンプから美女を買い取る。イタリアから父を探しに来て戦争に巻き込まれたこの美女。彼女に横恋慕した多国籍軍の将軍が妻を殺害。裁判で将軍に不利な証言をしたためこの難民キャンプに匿われていたのです。曰く付きのこの美女の登場で村が大変なことに。
コスタを愛している娘は兄と同じ日に結婚式を挙げるのが幼い時からの夢。コスタに迫ります。ところが無気力な毎日を過ごしていたコスタは美女に一目惚れ。美女もコスタの中に自分と同じ魂を見いだします。
そこに戦地から英雄の兄が戻り二組の結婚式が挙げられることに。
その結婚式の最中、例の将軍の部下達が停戦中の村を襲い村人達を皆殺しに。偶然コスタと美女だけがこっそり逢引していて助かります。
ここから2人の命懸けの逃避行が始まります。
愛すべき動物達や、寓話的なエピソード。ユーモアが散りばめられた美しい映像。観客は次々と繰り広がる絵画のようなシーンの中に一緒に飛び込んで体感したような気になります。中年のカップルだということを忘れてしまう童話のようなラブストーリー。

夜明けの祈り



戦時中にはナチス、戦後は旧ソ連の統治下にあったポーランド。悲惨な話を沢山聞いていますが、この映画も信じられない話です。石の建物と曇り空。民間の人が被る戦禍。信仰、性暴力、静かな画面、突破口となる人間の勇気。以前見た『イーダ』というポーランド映画を思い出しました。暗い話ですが、主人公が前を向いて歩いていく姿に希望が見えます。
戦争の終結した1945年12月、ポーランドの赤十字で働いているフランス人の女医の元を若い修道女が病人を診てと頼みに来ます。規定外なのでいったんは断わりますが、窓の外で祈る姿に心を打たれ一緒に修道院へ向かいます。そこで彼女が目にした悲惨な現実。
なんと若い修道女が臨月、しかも逆子。何も設備のない修道院で帝王切開を行い無事出産させます。ほっとしたのもつかの間。まだ数名の修道女が臨月を迎えようとしています。修道院長は何も語ろうとしません。副院長が重い口を開いて、修道院に駐留したソ連兵の蛮行を語りました。修道女達は神に仕える自分が汚されたことを自分の罪として恥、また修道院長はこんなスキャンダルが世間に知られたら修道院が閉鎖されることを恐れて訴えません。院の中で処理しようとしています。
女医は修道女達の健康の為に極秘で修道院に通うことを了解させます。
通ううちにだんだんと修道女達と心が触れ合い、特に副院長とは深い繋がりが芽生えてきます。修道女達が1日のお務めを終えてオルガンの回りで歌ったり、刺繍をして過ごすシーンが美しい。
そんな中二人の妊婦が同時期に出産を迎えることになり、女医は自分に好意を寄せている上司に相談して修道院に同行してもらい無事出産を促すことができました。生まれた子供は院長が里子に出したと説明していたが、ある日最初に出産した修道女が院長が子供を籠に入れて森に入って行くのを見かけて追いかけます。途中で見失い、院長が1人で戻る姿を目にして全てを悟り、重い罪である自死を選びます。
女医が属す赤十字が解散されることになり、パリに戻らなければなリません。どうしたら生まれた子供達を無事に育てられるのだろう?
今ではソ連兵にうつされた梅毒の為に死の床についている院長にここに孤児院を併設することを提案します。
院長は自分は隠すことだけを考えていたと涙します。
町にたくさんいる孤児達と生まれ子供達を皆で一緒に育てることになり、ようやく修道院に春が巡って来ました。
重いテーマだけれど、それぞれのキャラクターが丁寧にえがかれ、雪の下でジッと耐えている草花の息吹が感じられるいい映画でした。






秀山歌舞伎



9月の歌舞伎座は恒例の秀山祭。初代中村吉右衛門の功績を讃えて生誕120年を記念して2006年に始まったそうです。今年は12年目の10回目。という訳で二代吉右衛門が大活躍。久しぶりの歌舞伎座が嬉しい。😃 私はこの劇場が好きなのだな。

第一部は 彦山権現誓助劔 ひこやまごんげんちかいのすけだち 毛谷村。昨年の春に仁左衛門、孝太朗のコンビで見た演目。主人公六助は剣の達人でちょっとお人好し。今回は染五郎と菊之助コンビ。
小倉藩では六助と試合で勝った者を召し抱えるというお触れを出しています。六助は母親孝行の為に士官したいという浪人微塵弾正から頼まれ試合で負けてあげると約束をします。
この芝居では冒頭から試合のシーン。約束どおり負けてあげた六助に弾正は肉肉しげに、文句を言うなよと彼の額を扇で打ち付けて召されて行く。六助の人の良さと弾正の嫌味な性格がはっきり現れるシーン。ここで弾正の本質に気がつかなくちゃ、頑張れ六助。
そこへ幼い少年が戻ってくる。この少年、先日瀕死の侍から預かって面倒を見ているところで、彼の着物が旗👘のように物干し竿にぶら下げられている。少年を寝かせたところへいわくありげな旅の老女が宿を借りに。しばらくすると虚無僧が現れ、干された着物を見て六助に襲いかかる。六助がかわしながら、虚無僧の振りをしているが女だと見破る。二人が闘っているところへ少年が目を覚まして女におば様と呼びかけます。ここからは荒唐無稽な歌舞伎のお約束。先ほどの老女は女の母で少年の祖母。しかも六助の師匠の未亡人。お園というその女は父からいずれ六助と夫婦になるよう言われていたという。行動的な二人の女があっという間に六助とお園の祝言を取り計らい、晴れて夫婦に。
そしてあの弾正こそが師匠の仇と判り、六助は三人に仇を打たせてやるべく弾正の元へ。
今回同じ演目を違う役者、演出で見て、なるほどこれが歌舞伎の楽しみの一つだと実感しました。六助という男の人の良さは仁左衛門が演じると本当に自然で、可愛らしい。染五郎も頑張って可愛いらしくしているけれど、なんとも言えないユーモアを感じたのは仁左衛門と孝太朗コンビ。お園は怪力の持主で、六助が自分の許嫁だと解るや恥じらって思わず手元にあった石臼を持ち上げて、また恥じらう。このシーンが印象的。
日舞のお師匠さんをしている友人は何十年にも渡って歌舞伎座はもちろん国立劇場、南座、演舞場など毎月の公演を隈なく観劇。素晴らしい記憶力の上、役者によっての型の違いや、演出、長唄、清元、衣装などにも詳しくて、その面白い歌舞伎裏話を聞くのが楽しみです。
以前は同じ演目を見て飽きないのかなと思っていたけれど、歌舞伎は見れば見るほど面白いのだとちょっと判り始めてきたところです。
どのジャンルも、素晴らしい芸は見れば見るほどまた見たくなりますね。

次の演目は 道行旅路の嫁入 みちゆきたびじのよめいり 仮名手本忠臣蔵から大星由良之助の嫡子力弥の許嫁小浪。お家断絶となり浪人となってしまった大星親子。小浪は力弥を慕い、義母となる戸無瀬と共に大星の蟄居する山科へと旅する道行道中。
坂田藤十郎の戸無瀬と孫にあたる壱太朗がこの親子を演じています。藤十郎さんはちょっと動くと座っての繰り返し。観客の方がドキドキします。壱太郎と奴役の中村隼人が若々しい踊りで奮闘。藤十郎さんのピークを見てきたファンは何思うのか?

最後の演目は吉右衛門の幡髄長兵衛 ばんずいちょうべい。 この作品も人気があるのか私ですら三回も見ています。昨年の中村芝翫の襲名披露で、その前に海老蔵で見ています。色気があって哀れを覚えたのは海老蔵でしたね。劇中劇、江戸村山座では芝居が佳境に入ったところで邪魔者が。旗本水野の家臣が酔っ払い乱入。見兼ねて止めに入ったのが長兵衛。客席から登場するヒーローに観客も劇中劇の出演者達も大喜び。鮮やかに不埒な輩を成敗する姿は吉右衛門に軍配。
その姿を苦々しく思い見ていた旗本水野。染五郎が演じています。不吉な予感がしてきます。
二幕目は長兵衛の家。村山座の一件以来小競り合いの絶えない両者。そこへツツジが見頃なので一献差し上げたいとの水野からの誘い。この誘いが企みだと知りながら支度をする長兵衛。無事を願う家人。
水野の屋敷でもてなされるうちに、わざと酒をこぼされて風呂に入る羽目に。
丸腰、浴衣姿で浴場で襲われ、大乱闘。このシーンが一番短かったのが今回のような気がします。その分、大見得切っていかにもお芝居としていて流石、吉右衛門は貫禄勝ちか?



今日の席は二階の前列中央でとても見やすい。

今日のお弁当。関西風の卵焼きが大きくて薄味で美味しい。満足な観劇。

ポッペアの戴冠



川口リリアの音楽ホールで開催された『ポッペアの戴冠』を楽しんできました。濱田芳通さん率いる古楽アンサンブルのアントネッロ主催のライト-オペラ。濱田さんはリコーダーと指揮で八面六臂の大活躍。カウンターティナーの弥勒忠史さん演出、主演。悪名高い暴君ネローネ(ネロ)の恋物語? 周囲の反対を押し切り、皇后を離縁し、邪魔者を排斥して愛人ポッペアとめでたく結ばれるお話。
ステージの中央に古楽アンサンブルのメンバーが陣取り、メロディを奏でています。階段状のステージになっていて歌手達は音楽家の周りで歌い、時にメンバーと戯れて楽しそう。リュートやキターラ、チェンバロ・アルパ-ドッピアなどの古楽器のメロディが美しい。色々なサイズのタンブレロを奏でる演奏家が格好良くて目も楽しくませてくれます。

冒頭は運命の女神と美徳の女神が、自分こそが人間達に大きな影響を与えると言い争っている。そこへビーナスの息子で、愛の神アムールが僕こそが何よりも優れた存在だと豪語。さあ見てごらん彼らを。僕の動きひとつで世界が変わる。
ここで場面展開。戦地から戻ったオットーネは恋人ポッペアの部屋の前にネローネの兵士達がいるのを見て、ポッペアの心変わりを知り嘆きます。
夫の浮気に悩まされている皇后オッターブィアはオットーネにポッペアの殺害を命じます。悩むオットーネに心を寄せている侍女ドゥルジッラが自分の服を貸します。彼女の服を被ってポッペアを殺そうとしますが、果たせず逃げるオットーネ。ドゥルジッラが身がわりに捕まります。彼の罪を被り死を覚悟。そこへオットーネが現れ自分が殺そうとしたと言います。お互いを思いやる心にネローネは二人に所払いを命じます。さらにオッターブィアの命令だと知り、これ幸いと離縁し流刑を命じます。これ以前にネローネに苦言を呈していた師であるセネカにも自死を与えていたので、二人の前に立ち塞がる障害はすっかり無くなったことに。
最後の大詰め。たくさんの犠牲の上でいよいよポッペアの戴冠。宙に浮いていたハート♥️の飾りが降りてきてその中に収まるカップル。ゴンドラに乗って降りてくる新婚カップルのようで思わず笑いが。そこへアモーレが祝福の紙吹雪。

ネローネ役の弥勒忠史はまるでカストラートのようなカウンターティナー。凄い声。
衣装や髪型に古代ローマのイメージに和風ティストが取り入れられているので、日本人が演じる違和感がないのもいい。
暴君ネロは前皇帝の後妻になったアグリッピナの連れ子。幼くして皇帝の座についた訳です。オッターブィアとの結婚は母の命令だとか。オッターブィアは地味な性格だそうで、反対にポッペアは女として生まれたことを最大に活かすタイプだそうです。しかしこの熱愛も僅か三年後には、ネローネを怒らせたポッペアが彼に腹を蹴られて死んでしまうそうです。アモーレもそこまでは面倒をみれなかったのですね。
オペラというとなんだか肩肘張って観に行くイメージがあるけれど、こんな楽しいライト-オペラなら気軽に行けるのでいいですね。

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