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秀山祭9月歌舞伎

92明治から昭和にかけて活躍した初代中村吉右衛門(1986~1954)の生誕120年を記念して、孫の二代吉右衛門や九代松本幸四郎などによって2006年から行われているのが九月恒例の秀山祭。秀山とは初代の俳名だそうで、この名を冠し、芸を継承する会です。今回は昼の部を堪能しました。


93 最初の演目は「双蝶々曲輪日記・ふたつちょうちょうくるわにっき」 この狂言は「角力場・すもうば」「米屋」「引窓」「橋本」という場面がよく上演されるそうですが、今回は珍しい序幕の場面が上演されました。物語の発端になります。二組の恋人たちが登場しますが、こののち運命を翻弄されるのですね。

新清水にある料亭、浮無瀬・うかむせが舞台。藤屋の遊女吾妻(芝雀)には山崎屋の若旦那与五郎(錦之助)。都(魁春)には元侍で今は笛売りの南与兵衛(梅玉)という恋人がいます。ところが吾妻に身請けする話が。驚いた与五郎に山崎屋の手代が店の金を工面しますと提案。実はこれは偽の金を用意して与五郎を罪に陥れようとする手代の策略。手代は金を手に入れて都を身請けしたいと思っていたのだ。

それを陰で聞いていた与兵衛が与五郎を助けようと誤って手代の仲間を手にかけてしまいます。その時に左手の小指をかみ切られてしまいます。どんな理由があるにせよ人を殺めてしまった与兵衛。都に指のけがを聞かれ理由を話すと手当をして奥に行くように。そこへ手代が金を持って都を口説きに。私を本当に好きなら小指をおくれと、手代を誘惑。手代の小指を切り落としたところに、ご詮議が登場。死体が小指を加えていたので小指を怪我している手代を引っ立てて行ってしまいます。

能天気なのは何も知らず(自分が騙されて、それを助けようとして殺人が起こったことも知らない)奥座敷で大騒ぎをしている与五郎。錦之助がのんびりした若旦那を好演。

与兵衛は吾妻を身請けしようとして失敗した侍二人に追われて清水寺の大舞台へ。やりあった後で二人を煙に巻くかのように、傘をさして清水の大舞台から地上へふわっと舞い降りていきます。舞台の上を宙吊りになってふわふわ、花吹雪と一緒に舞っている様子は気持ちよさそう。

9 次の演目は「紅葉狩・もみじがり」。以前に能で見たことがあります。また違った趣。平維茂(松緑)は従者を伴い戸隠山に紅葉狩りに来ると、宴を催している更科姫(染五郎)の一行に誘われ酒を酌み交わします。更科姫の舞姿を見ているうちにまどろみ、いつしか姫たちは姿を消してしまいます。そこへ山神(金太郎・染五郎の長男)が現れ更科姫はこの山に住む鬼女だと警告します。目覚めた維茂は鬼女の姿を現わした更科姫に立ち向かい、松の大木の上まで追い詰めていきます。

紅葉の華やかな背景を背に竹本、常磐津、長唄の三方掛け合い。更科姫の美しい舞を眺めながら意識が薄れていく平維茂。私もあまりの気持ちよさに意識が遠のいていました。意識が戻ったのは花道を元気に駆け抜けていく金太郎君の雄姿を見て。10歳でこの大舞台を務めるなんていいね~。

92_2 今日のメインは「競伊勢物語・だてくらべいせものがたり」 この競は「はでくらべ」 とも伝えられているそうです。なんとこの演目は歌舞伎座で50年ぶりに上演されるそうで、あの渡辺保氏をして、待ち遠しくて初日に鑑賞とのこと。さてさてどんなお話なのか!

紀有常(吉右衛門)は高貴な身分ながら兄に勘当されて東北を漂白。その時に隣人だった小由(東蔵)に実の娘信夫・しのぶ(菊之助)を預けます。その後許されて都に戻ります。そして自分は文徳天皇の内親王井筒姫(菊之助)を自分の娘として育てています。井筒姫は在原業平(染五郎)と駆け落ちして小由の家にかくまわれています。その井筒姫に横恋慕しているのが文徳天皇の跡目を惟仁親王と争っている惟喬親王。惟喬新王は紀有常に自分の意に従わない姫を殺すように命じます。そして三種の神器の一つ神鏡を惟仁親王側から奪い玉水淵に隠してしまいました。伊勢物語を題材にした惟喬,惟仁の皇位争いの陰謀を描いた7幕の脚本のうち5幕、6幕が現存されていて上演されるそうです。ここまでの話は伏線として暗黙の了解というわけです。

5幕目から始まるこの話。序幕は「奈良街道茶店の場」。京都へ商いに行って奈良へ戻る途中の信夫と新婚の夫の豆四朗(染五郎)。一休みしている茶店で信夫は夫の秘密を聞かされます。実は夫は惟仁新王側の在原業平の旧臣磯上俊清で神鏡を探しに玉水淵へ行くということを。この玉水淵は立ち入り禁止で禁を犯せば処刑されるという場所。それを茶店の親父にに聞かれ困っていると荷役として雇っていた饒八(又五郎)が親父の首を絞め二人を逃がします。ところが二人はグルで先に鏡を見つけようと殺したふりをしただけでした。そうとは知らない信夫たちはその場を逃げ出して国へ戻ることに。

その夜、饒八は玉水淵に潜って見事鏡を探し出します。そこへ現れたのが夫のために鏡を手に入れようと夫を騙してやってきた信夫。暗闇の中、かすかにお互いの空気を感じて動くこの二人がとてもいい。緊迫感があって息をつめて見入るシーンです。最後に信夫がうまく鏡を手に入れ饒八を交わして逃げ切ります。

次の場は小由の家。戻った信夫は夫に神鏡を渡すと、禁をおかしたから母も処刑されると聞き、わざと勘当されるために母につらく当たります。そこへ今は高位の有常が訪れ昔の長屋仲間のように小由とはったい茶を飲みながら世間話。べらんめえな口調で昔の思い出を話しながら娘を返してほしいと話しの核心へ。小由に拒絶されます。そこへ禁断の場へ入った犯人の詮議が・・・。それを裁くのは有常。ついに小由も有常が娘を都へ連れ帰ることを承諾。

有常が十二単を抱え信夫のいる部屋に入る下り。このときすでに娘を井筒姫の身代わりにする決心をしている有常がゆっくりと小由を振り返る様は一瞬時間が止まったような印象を残します。都へ連れ帰ると称して娘の髪をおすべらかしに漉くくシーンは絵のよう。髪を漉きながら実は身代わりにお前を殺すと娘に打ち明けると、けなげな娘は夫に会いたいと。そこへ豆四朗が業平の身代わりになるべく白装束で現れる。

別れに娘の琴に合わせて砧を打ちたいという小由。豆四朗を衝立で隠し琴をつま弾く信夫。何も知らない小由が砧を打っている間に豆四朗が切腹。信夫の手が震える。そして有常が衝立の影で娘の首を討つ。身を殺しても大儀のために・・・。それぞれの思いを抱えた四人が作り出す悲劇の空間、まさに歌舞伎の空間ですね。

9_2 永田町当たりのいやな動きや災害、事件と暗いことが多い日々。こんな時に歌舞伎を楽しんでいていいのかと一瞬思ったけれど、いやいや、こういうものを楽しめなくなる世の中にしてはいけないと強く思い直しました。

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9_4 これはまさに歌舞伎弁当。木挽町ホールで販売中。

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