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塀の中のジュリアス・シーザー

Img2 イタリアのある刑務所内で囚人たちの演劇実習が行われています。毎年様々な演目を実習し、所内の劇場で練習の成果を一般の観客に見てもらうというカリキュラム。これだけでもびっくりなのに齢80をともに超えるパオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟がこの実習に興味を持ち刑務所にドキュメンタリー風な映画をとることを提案。格好いい兄弟!出来た映画がこの「塀の中のジュリアス・シーザー」。私はずっと堀の中と思い込んでいました。塀です。

刑務所の協力のもとその年の演目をジュリアス・シーザーと決定。この映画はオーディションから練習風景、最後の舞台風景までを見せてくれます。実際に演劇指導をしていた演出家がこの映画のために演出という立場を離れ、自らが映画の中で演出家という役を演じています。囚人達もオーディションで勝ち取った役を演じる囚人を演じています。

このオーディション風景が面白い。自分の名前、出身地、父親の名前を妻と別れるように切なく、そしてもう一つは税関で問い詰められて怒ったようにと、二種類の方法で言わせます。もうすごい、皆役者です。偽名でいいといったのに皆本名を名乗ったそうです。すごいね。

ただ時間の流れでドキュメンタリーを撮っているのではなく、しっかり演劇プランの中で演じている。監督は脚本をつくたと語っています。けれど印象はあくまでドキュメンタリーのよう。囚人たちの実際に抱える苦悩が、芝居の中のブルータスやシーザーやキャシアスの抱える猜疑心や友情と裏切りなどの苦悩と対比されます。

麻薬売買、累犯、殺人、反マフィア法の違反などの生々しい罪状と本人が本名で登場。画面の中で芝居の練習をしている姿が現実か非現実なのか解らなくなってしまう。監獄の中をモノクロで撮影しているのも非現実的にしている。最後の舞台で囚人たちの歓声があがるシーンで色彩がよみがえることでより効果が上がっているように見えます。

いま、刑務所はローマ帝国へと変貌する・・・というコピーがうなずけます。皆囚人なんだけれどすごくいい顔をしている。監督達は監守の一人に「彼らに慈悲心や友情を感じるときがあるが自分を制御して近づきすぎないようにしている。」と言われたそうです。それは彼ら以上に苦しんでいる人たち、すなわち被害者やその家族のことを考えなければならないからです。それでも映画が完成して刑務所を去るときはとても悲しい別れになったそうです。

キャシアス役の囚人は殺人罪で終身刑。この演劇プログラムに長く参加していてまとめ役のベテラン俳優になっています。撮影が終わって自分の監房へもどった彼が「明日からは何事も同じではない」と寂しそうにつぶやいたラストシーンが印象的でした。

Img_00012 舞台の上で歓声を上げる出演者たち。中央がシーザー役。罪状は麻薬売買で懲役17年。「内なる自由」を出版。一人置いて右がキャシオ役。「終身刑囚の自伝」を出版。

日本だったら考えられない企画ですね。テアトルシネマでやっています。ここは5月で閉館するそうです。いい映画を上映しているんだけれどね。残念。

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コメント

今日見てきました。うー、重かったです。最後のテロップ「芸術を知ってしまってからは監獄が牢獄になる」。その通りだと思います。昔昔、演劇部の顧問でしたが、みんな高校生の演劇よりうーんとうまかった。やはり、その人の人生が出てくるんですね。苦悩、怒り、追従、自分の中にあるかけらを広げていく、表現していく。見事なだけに、最後のテロップのように、自身の自己責任といえ、人生の真実に気づいて人たちが、その中で20年、終身刑、と過ごしていく。哀しい。
多分、普通の人生を過ごしている人たちを集めて、あんな風にお芝居をさせても、きっとできないだろうなと思います。感情の揺れ、大きすぎる自分でも持てあますような感情を持っているからこそ表現できることなのだろうなと思いました。

栃木のヨガおじさん。コメントをありがとう。happy01
規制がある中だからこその真実の探求。自由な時には見つけられなかった自分の生きがい。
皮肉ですね。でもきっと限られた時間や境遇で見つかるもの多いですね。
塀の中の人々、一人一人の個性が際立っていましたね。
踊りも若い時には表現できないものがありますね。
ヨガおじさんだからこそ踊れるものがあると思います。
シュローカ、楽しみにしています。

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