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アンダーグランド

Img_00012 渋谷のシアターNで11月に上映されていた映画を見てきました。1996年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドール大賞に輝いた作品。 私は87年から10年位、内外のいろいろなコンサートなどに眼を向ける余裕がない生活をしていました。インドへ行く、日本で働く、自分のコンサートを企画するだけで手一杯。インド関係以外のイベントやコンサートに出かけた記憶が乏しい。この映画もタイトルを聞いたくらい。というわけで今回、小さな劇場ですが上映されると聞き出かけました。渋谷はミニシアターがたくさんありますね。シアターNは初めてなので、どんなところかそれも楽しみ。桜ケ丘のほうにあります。駅からすぐ、坂の途中です。

Photo この坂をちょっと登った右にあります。偶然木曜日に行ったらレディス・デーで得した気分。

旧ユーゴスラヴィア。1941年のナチのベオグラード空爆から物語が始まります。主人公マルコは天才的詐欺師で企業家。親友クロをまきこんでパルティザンと称してナチの輸送車を襲ったりして大儲け。2人は戦火を逃れるために巨大な地下貯蔵庫に人々を避難させそこで武器などを生産させている。マルコの弟イヴァンは優しい動物園の飼育係でチンパンジーのと一緒に避難。クロの身重の妻も地下に避難したが息子を産んで死んでしまいます。

43年、クロは恋焦がれている女優ナタリアをナチの将校フランツから奪うが、逮捕される。マルコが助け、ナチの追跡を逃れるためにクロも地下へ。ところがマルコは彼のいない隙にナタリアを誘惑、結婚してしまいます。

44年連合軍の空爆ののちドイツの侵略は終わるがマルコはそれを隠し、今だ戦争が続いているようなニュースを流し地下の人々をだまし続ける。 地下ではせっせと高度な武器を作り出し、地上ではチトー大統領率いる社会主義ユーゴスラヴィアが高度成長を遂げ、マルコもナタリアも英雄であり、国民的アイドルになっている。折も折マルコを主人公にした映画の製作がはじまる。プロパガンダですね。その中でクロはナチスの将校フランツにより銃殺されたことになっている。

61年になり地下で生まれ育ったクロの息子ヨヴァンエレナと結婚することになり地下の結婚式にマルコとナタリアが列席する。人々をだまし続けていることへの罪悪感からナタリアが悪酔い。思わず、自分たちの裏切りをクロにしゃべってしまう。クロはマルコに拳銃を渡す。マルコは自分の脚を撃って自殺を図る。その銃声に驚いたチンパンジーのソニが戦車に逃げ込み偶然砲弾を発射させてしまい、この地下の巨大な牢獄に風穴を開けてしまします。

逃げまどう人々。 地上は豊かな社会。ところがクロと息子ヨヴァンがドナウ川を流れて辿り着いたのはマルコの映画撮影現場。ナチの将校がクロを射殺するシーンに出くわして、思わず将校役の俳優を殺し、撮影隊に向かっても銃を乱射。現場は大混乱。ヨヴァンは新妻エレナの幻影を追いかけてドナウ川に沈み、クロは逮捕される。82年チトー大統領死去。ここからまた経済危機、民族主義の芽生え、共産党内の対立等々。ついに90年に事実上ユーゴ国家の崩壊を迎えます。

92年、マルコの弟イヴァンは精神病院に入院していたが、脱走して旧ユーゴに。古いトンネル内にあちこちの国へ向かう難民を乗せたバスが走っているシーンが不気味でした。民族闘争で破壊された村に辿り着いたイヴァンはそこでゲリラを指導しているクロを見かけます。そして車いすに乗って戦争商人をしているマルコにも出会います。兄の今までのたくらみを知ったイヴァンはマルコを殴り、殺したと思い自分も教会の鐘に首をつって自殺。鳴り響く鐘の音が切ない。

ぐったりしているマルコに呼びかけ抱きしめるナタリア。二人を兵士が射殺。車いすに乗っている2人ごとガソリンで燃やしてしまいます。ぐるぐる回っている火の車を見つけたクロ。東欧の歴史にでてくる大統領夫妻の処刑シーンを彷彿。廃墟の中、クロが逆さになった磔になったキリストに抱きついているシーン。アンジェィ・ワイダの「灰とダイヤモンド」を思わせると、大好きな淀川長治さんが解説を書いていました。(この映画が公開された当時に書かれた原稿ですね)

避難民を率いてクロが地下貯蔵庫に戻ります。すべてが終わってしまった今、息子の声に導かれてドナウ川の岸辺に。そこでは中断されたヨヴァンとエレナの結婚式が。懐かしいすべての人々、好きだった人も憎んだ人も・・・。皆が食べて、飲んで、踊って楽しんでいます。やがて彼らのいる場所だけが岸辺から切り離されゆったりとドナウ川を流されていくシーンでこの3時間に近い映画が終わりますが最後のせりは「この物語に終わりはない」★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

戦争がまだ続いているとだまされ続け、地下で武器を作っていた人々。地上に出たら祖国は消失。この暗すぎるテーマをこの映画はブラック・ユーモアでくるんでいます。50年間にわたるおとぎ話のような映画です。度肝を抜くような映像シーン。地下の結婚式のシーンでは花嫁がワイヤーでつりさげられて、空中を飛びながら花婿の隣の席に着きます。シャガールの絵そのもののイメージ。空爆された動物園からトラや象が檻を抜けて家の窓辺にいたり、あまりのシュールな映像に笑ってしまいます。いろいろな場面で登場するブラスバンドの賑やかなビート、そこにかぶさる哀愁が漂うジプシー音楽。登場人物達は地下にいても地上にいてもたくましく、明るい。不思議な時間を体現した映画でした。

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コメント

「アンダーグラウンド」ちょっと懐かしいです。

十数年前見たときは、
主人公マルコが、なぜか私の知り合いの方に似ていることと

地上と地下の生活、激しいジプシー音楽、燃える車椅子の衝撃的な映像、不思議なラストシーン、長さを感じさせないストーリーに私的にも記憶に残る映画でした。

先生のブログを読んで、また観たくなりました
十数年ぶりに観ると、また違った印象を受けるかもしれませんね。年末にもツタヤで借りてこようかな

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